糖尿病網膜症—ナノ点眼薬
4月8から11日、今年度の日本眼科学会総会が大阪で開催されました。
現在、大阪は新型コロナウイルス対策として、まん延防止等重点措置が適応されていますので、感染対策を徹底した会場でのリアル開催と、webでの聴講が可能なハイブリッド開催となりました。
10日(土)午後からは、「評議員会指名講演」のライブ配信がありましたので聴講しました。
「評議員会指名講演」は、毎年、指名された3名の発表者が、定められたテーマに沿って、これまで行ってきた研究の集大成と今後への展望を発表します。
今年のテーマは「眼科検査・治療の低侵襲化」で、宇治彰人先生(京都大)、小林 顕先生(金沢大)、長岡泰司先生(日本大)が発表されました。
長岡先生は「糖尿病網膜症診療の低侵襲化」についてご講演され、ナノ点眼薬での糖尿病網膜症治療についての研究についてもご紹介くださいました。
ナノ点眼薬は、薬剤をナノ粒子という微細な粒に加工し、点眼薬として用いる現在開発中の薬剤です。
2018年11月11日のブログで、近視治療のナノ点眼薬を紹介しました。
長岡先生が開発中のナノ点眼薬は、点眼した薬剤が強膜(白目)を通って目の奥の網膜に移行し、糖尿病網膜症の発症予防や進行防止を目的としています。
糖尿病網膜症に対する治療は、視力が低下する黄斑浮腫に対する薬剤の眼内注射、進行した糖尿病網膜症に対し更なる進行を抑えるための網膜光凝固、目の中の出血や牽引性網膜剥離に対する硝子体手術で、いずれも進行した糖尿病網膜症が対象です。
糖尿病網膜症の予防には良好な血糖コントロールが有効ですが、初期の糖尿病網膜症に対する治療薬や進行防止法はありません。
点眼は、眼内注射や硝子体手術と比べ手軽に行える治療法ですので、極早期の糖尿病網膜症にも適した治療法です。
ナノ点眼薬研究のさらなる進展が期待されます。
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