裂孔原性網膜剥離
網膜が眼球の壁から剥がれる病気が網膜剥離です。網膜剥離には、網膜が剥がれる原因により、いろいろな種類があります。網膜に破れ目(網膜裂孔)ができ、そこから周囲の網膜が剥がれてくる網膜剥離が裂孔原性網膜剥離です。網膜裂孔が生じると、目の中の液体(液化硝子体)が裂孔を通って網膜の下に入り込むことで網膜剥離が発生します。剥離した網膜の範囲は、時間とともに拡大します。網膜裂孔が大きいと急速に網膜剥離の範囲が拡大します。剥がれた網膜には栄養が十分行き渡らなくなるため、網膜剥離が長く続くと徐々に網膜の働きが低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが20代と50代の人に多いといわれています。
網膜裂孔のでき方
1.中高年者の場合
眼球の内部は「硝子体」という無色透明のゼリー状の組織で満たされていて、網膜はその硝子体の表面と接しています。加齢に伴い硝子体は少しずつサラサラした液体に変化します。硝子体の液化が進むと、硝子体が網膜から?がれる後部硝子体剥離が起こります。
後部硝子体剥離は加齢変化による生理的なものです。しかし後部硝子体剥離が生じる際に、硝子体と網膜が強く癒着している場所があると、収縮する硝子体が網膜を引っ張り、網膜が引き裂かれ、亀裂や穴、つまり網膜裂孔ができることがあります。後部硝子体剥離は50歳以降に生じることが多いので、後部硝子体剥離に伴う網膜裂孔は中高年者に起こります。
2.若い人の場合
近視の度が強い人は、眼球の長さ(奥行き)が普通より長いために、眼球の壁も薄くなり、網膜にも薄く変性した部位ができることがあります。薄い部分の網膜が萎縮して、円孔という丸い裂孔ができることがあります。このメカニズムによる網膜裂孔は、比較的若い人に多くみられます。このほか、スポーツなどで眼球打撲を受けると網膜裂孔が生じることもあります。激しいスポーツをする若い人にみられます。裂孔原性網膜剥離の症状
裂孔原性網膜剥離の前駆症状として飛蚊症(小さなゴミのようなものが見える症状)や光視症(視界の中に閃光のようなものが見える症状)を自覚することがありますが、無症状のこともあります。病状が進んでくると視野欠損や視力低下が起こります。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。
裂孔原性網膜剥離の治療
網膜裂孔・円孔だけであれば、レーザーによる網膜光凝固術で網膜剥離への進行を抑えられることがあります。すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。網膜剥離は治療せずに放置した場合、失明する可能性の高い病気です。
手術は大きく分けて2つの方法があります。
強膜内陥術は、眼球の外から網膜裂孔に相当する部分にあて物をあてて、さらに孔の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って剥離した網膜を剥がれにくくし、必要があれば網膜の下に溜まった液体を抜くという手術です。必要に応じて、あて物を眼球の一部に縫い付けるだけでなく、輪状に縫い付ける(輪状締結術)こともあります。
硝子体手術は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する方法です。硝子体手術では、剥がれた網膜を押さえるために、手術終了時にほぼ全例で目の中に空気や特殊なガスあるいはシリコーンオイルを入れます。手術後に眼内の気体で網膜裂孔を圧迫するような体位の保持が必要となります。水晶体を眼内レンズに置き換える、白内障手術が併施されます。