近視治療の点眼薬—Nanodrops(ナノドロップス)
- 先日のテレビ番組で、ご高名な生物学の先生が「今や点眼薬で近視や老眼が治る時代になった」と仰しゃっていました。
- とても興味深い話題ですので、これについて解説させていただきます。
- ことの始まりは、2017年10月に開催された欧州白内障屈折手術学会において、ポスター展示として発表された研究報告です。
- イスラエルの大学から、近視や遠視を改善する効果のある目薬(ナノドロップス)についてのポスター発表があり、眼鏡やコンタクトレンズ、近視矯正などの手術が不要になる可能性が示唆されました。
- ナノドロップス点眼薬には、ナノ粒子と呼ばれるとても微細な粒が含まれています。
- 実験では異なる濃度のナノ粒子を含む目薬をブタに点眼することで、近視や遠視が矯正されたと報告しています。
- ナノドロップスは非侵襲的に視力矯正できる革命的な治療方法で、眼鏡やコンタクトレンズが不要になる可能性があると結論付けています。
- ナノドロップス点眼薬に含まれる微細な粒子が角膜に染み込み沈着し、その結果、角膜の形状が変化し、近視や遠視の改善につながるものと推測されます。
- この研究はあくまでもブタでの実験です。当時のインタビューで研究責任者は「2018年中にナノドロップスのヒトへの臨床試験を予定している」と、語っています。
- 残念ながら現時点では、ヒトへの有効性についての報告はありません。
- 近視や遠視の矯正には、症例に応じた精度の高い治療効果が求められます。
- また、効果が長期に持続することも必要ですし、長期の安全性も確保されなければなりません。
- 点眼で近視が治すという発想はとても魅力的です。
- メガネをかけている私には、是非とも実現してもらいたい治療です。
- ただ、治療としての有効性と安全性が確立されるまでにはたくさんの地道な研究とデータの蓄積が必要です。
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