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「見る」を取り戻す未来へ:イーロン・マスク氏と視覚再生技術の最前線

「もし、目が見えなくなっても、脳に直接“映像”を届けられるとしたら?」

このSFのような構想を現実の医療技術に変えようとしているのが、スペースXやテスラで知られるイーロン・マスク氏が設立した企業Neuralink(ニューラリンク)です。

彼らが今取り組んでいるのは、「脳とコンピューターを直接つなぐブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」によって、失明した方々の「視る能力」を再びよみがえらせるという壮大な挑戦です。

現在Neuralink社が開発中の視覚再生装置は、「ブラインドサイト(Blindsight)」と呼ばれる脳内インプラントです。

この技術の最大の特徴は、目や視神経を完全に損傷した方でも、脳の視覚皮質が健在であれば“視覚”を再構築できる可能性があるという点です。

具体的には、網膜や視神経を通さずに、マイクロ電極アレイを脳の視覚皮質に直接埋め込み、ニューロンを人工的に刺激して視覚体験を生み出すというものです。

初期段階では「アタリのグラフィックスのような」(ラフスケッチのような粗い簡略化されたグラフィックス)低解像度の白黒画像しか得られませんが、マスク氏は将来的に、本来ヒトが認識できない赤外線や紫外線も感じとることができる、拡張された視覚世界の実現を見据えているそうです。

我々眼科医にとって、視覚は「眼球→視神経→視覚皮質」という伝統的な経路で成り立つものです。

しかしブラインドサイトは、この経路を完全にバイパスし、「脳だけで見る」という新しい視覚のあり方を提示します。これは、眼球や視神経が機能しない場合の最終手段としてだけでなく、人間の感覚の定義そのものを拡張する可能性を秘めています。

2025年末には初の人体移植が予定されており、すでにサルでの動物実験は成功裏に終えているとのこと。

米国食品医薬品局(FDA)からは「画期的医療機器(Breakthrough Device)」指定も取得しており、開発と臨床の両面で急速に進展しています。

この技術が確立すれば、網膜色素変性症や緑内障、視神経萎縮など、現在では視力回復が困難な疾患にも希望の光が差し込みます。

加えて、応用の範囲は医療だけではありません。

例えば、消防士が暗闇で熱源を視認する、農業従事者が紫外線で植物の状態を見極める、夜間の車の運転支援など。

人間の視覚能力の「拡張」としての可能性も大いに期待されています。

もちろん、こうした技術の発展には慎重な姿勢も欠かせません。脳に直接接続するデバイスは、人間の思考や感覚という最もプライベートな領域にアクセスするものです。誤作動のリスクや、セキュリティ・プライバシーの課題、健康保険や医療アクセスの格差といった問題も、議論を深める必要があります。

「見える人」と「見えない人」だけでなく、「拡張視覚を持つ人」と「自然視覚の人」のあいだに新たな“感覚格差”が生まれる可能性も否定できません。

Neuralinkのようなハイテク医療機器はアメリカ中心で進んでいる印象がありますが、日本でもBCI(Brain-Computer Interface、ブレイン・コンピュータ・インターフェース:脳とコンピュータや機械を直接繋ぎ、脳の活動を読み取って外部機器を操作したり、逆に外部からの情報を脳に伝える技術)や人工網膜の研究は進んでいます。

慶應義塾大学や大阪大学などを中心に、日本独自の倫理観と技術力を融合させたアプローチが、より安全で洗練された視覚再生技術の開発に貢献しています。

私たち眼科医にできることは、こうした技術革新に希望を抱きつつ、科学的な根拠と慎重な臨床判断に基づいて患者さんに正しい情報を提供していくことです。

「視覚を再生する」─それは長年、医療・科学の夢でした。Neuralinkのブラインドサイトは、単なる治療法ではなく、「人間はどこまで感じることができるのか?」という哲学的問いへの挑戦でもあります。

この技術が今後どこまで進化するかはまだまだ未知数ですが、我々は、人類の知覚の歴史における転換点を目撃しようとしているのかもしれません。

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