65歳以上の成人のための眼の健康情報
今回は、米国眼科学会が2025年7月17日にホームページに掲載した上記表題の記事を紹介します。
65歳を過ぎたら眼科検診がいっそう重要に
年齢とともに視力は変化します。そのため、高齢期の健康的な視力を守るには定期的な眼科医による検診が欠かせません。
ここでは、加齢に伴い注意すべき点をご紹介します。
症状が出にくい眼疾患もある
老眼(遠近両用が必要になる屈折変化)は中年期に「手元が見えにくい」という自覚症状で気づきますが、緑内障糖尿病網膜症など一部の重篤な眼疾患は自覚症状が乏しいまま視機能を奪うことがあります。
定期検診では、眼科医がごく微細な変化を捉え、手遅れになる前に病気を発見できます。
コントラスト感度の低下は気づきにくい
加齢により、白いテーブルに置かれた白いコーヒーカップのように、背景と近い色の物体を区別しづらくなります。これを「コントラスト感度の低下」と呼びます。
軽度の低下は正常範囲ですが、白内障や加齢黄斑変性など、重篤な眼疾患のサインであることも。日常生活での転倒や交通事故リスクも高まります。
視力表ではコントラスト感度を測れない
視力表は黒地に白文字(高コントラスト)の視力のみを評価します。
視力が良好でもコントラスト感度が低下している場合があり、これは視力表だけでは分かりません。(当院では必要に応じて、コントラスト感度を測定し、より詳細に視機能を評価しています)
明るさの変化への適応が遅くなる
高齢者は明るい場所から暗い場所(あるいはその逆)へ移動した際、ピント調節や順応に時間がかかることがあります。
夜間運転が難しくなることも
光と暗闇の切替が苦手になると、特に夜間や雨天時の運転が困難になります。
視野が狭くなる疾患やまぶしさ(グレア)に対する過敏性が加わると、さらに危険度が上昇します。
全米道路交通安全局は高齢者ドライバーに対し、以下のように推奨しています。
・高齢者向け運転講習を受講する
・日中に運転する
・スピードを控えめに
・交差点では特に注意
・フロントガラスを内外ともきれいに保つ
・眼鏡に傷や汚れがないか確認
・処方度数を定期検査で更新
65歳を超えたら1〜2年ごとに受診を
65歳以上は1〜2年に1度の包括的な眼科検診が推奨されます。
早期発見・早期治療が視力維持の鍵です。
眼科の定期検診で重点的にチェックする主な疾患は以下の通りです
・加齢黄斑変性
・糖尿病網膜症
・緑内障
・白内障
眼科検診がもたらすメリット
・疾患を早期に発見し、進行予防や早期治療を行うことができます。
・視機能の年齢変化を把握し、生活の質を向上させる提案が受けられます。
・糖尿病や脳卒中の兆候など、全身疾患を発見できる場合があります。
ポイント
目は“脳と体の窓”です。
定期的な眼科受診により、視力を守るだけでなく全身の健康リスクにも先手を打ちましょう。
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理事長・院長