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糖尿病で目が見えなくなる時代は変わった?―糖尿病網膜症の20年間の変化を解析

「糖尿病になると、いずれ目が見えなくなるかもしれない」 そんな不安を耳にしたことはありませんか?


実際、日本では糖尿病網膜症が原因で1年間に3,000人ほどの方が視力を失うと報告されています。

では、私たちの医療が進歩した今、糖尿病網膜症は減ってきているのでしょうか?
それとも、逆に患者数は増えているのでしょうか?

今回は、アメリカの研究チームが Ophthalmology誌に発表した「過去20年間にわたる糖尿病網膜症の発症率と有病率の変化」を解析した論文をご紹介します。

研究チームは、アメリカで最も大きな民間保険会社の1つ「Optum」の医療データを活用し、2000年〜2022年までに糖尿病と診断された約615万人の情報をもとに、以下の3つの病気に注目しました:

・糖尿病網膜症(DRD):糖尿病によって網膜に起こるあらゆる変化

・視力に影響を与える重症型網膜症(VTDR):増殖型糖尿病網膜症(PDR)や糖尿病黄斑浮腫(DME)を含む

・DMEおよびPDR:視力障害の大きな原因となる網膜疾患

このデータをもとに、「何人の人がこの病気になっているのか(有病率)」「毎年どれくらいの人が新たに発症しているのか(発症率)」を年ごとに集計しました。

有病率(病気を持っている人の割合)

・DRD全体は、2007年に10.9%まで減ったあと、2021年には20.8%まで増加

・VTDRとDMEは2016年をピークにやや減少傾向(VTDR: 7.5%→6.9%、DME: 5.4%→4.9%)

・PDRは3.2〜4.0%の間で安定的に推移

つまり、「網膜症になる人」は増えていますが、「視力を脅かす重症型の割合」はやや減ってきているのです。

発症率(新たに病気になる人の割合)

 ・DRD全体の発症率は、2014年に最低(16.9/1000人年)となった後、2022年に最大(32.1/1000人年)

 ・VTDR、DME、PDRの発症率は、2008〜2009年をピークに右肩下がりで減少

   ・VTDR:13.6 → 6.1(−55%)

   ・DME:8.6 → 5.0(−40%)

   ・PDR:8.3 → 2.6(−69%)

これは、重症例の発症を抑える治療や予防が有効になってきていることを示しています。

研究チームは、糖尿病網膜症が減っている理由を以下のように挙げています:

 ・医療の進歩

   ・抗VEGF薬により、早期のDMEやPDRに効果的な治療が可能になった

   ・血糖コントロールを助ける新た薬剤が登場し、全身的な糖尿病管理も向上

 ・健康保険制度の改革

   ・オバマケアにより、低所得層でも医療にアクセスしやすくなった

   ・保険加入者が増えたことで、早期発見・早期治療が促進

 ・眼科検診の普及

   ・遠隔医療(テレメディスン)による眼底写真スクリーニングの導入

   ・年1回の定期眼底検査を受ける人が増加

一見すると明るいニュースですが、研究チームは以下の点も指摘しています:

 ・糖尿病患者そのものが年々増えているため、リスクのある人の「母数」が増加している

 ・DMEやPDRは発症までに数年かかり、重症化の波がまだ現れていない可能性も

 ・HbA1cが急激に改善すると一時的に網膜症が悪化することが報告されている

つまり、今後も長期的な観察と継続的な眼科ケアが必要であることには変わりありません。

この20年間で、糖尿病網膜症に関する医療は明らかに進歩しました。
特に、重症化を予防するための治療と検診の体制が整ってきたことは、非常に大きな成果です。

とはいえ、糖尿病患者の増加という背景を考えると、「発症率が下がったから安心」とは言い切れません。

早期発見・早期治療がこれまで以上に重要であり、1年に1回の眼底検査を続けること、そして全身の糖尿病管理を怠らないことが、将来の失明を防ぐ鍵になります。

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