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「注射の回数を減らしながら、見え方を守る」—VEGFを長く抑えるという発想

ジョンズホプキンス大学ウィルマー眼科研究所のCampochiaro教授が、眼底血管疾患に対する治療の課題と今後の展望についての見解がAmerican Journal of Ophthalmologyに掲載されましたのでご紹介します。

加齢黄斑変性(nAMD)や糖尿病網膜症・黄斑浮腫、網膜静脈閉塞といった網膜血管の病気では、血管内皮増殖因子(VEGF)という物質が増え、新生血管や水漏れ(血管透過性亢進)を起こします。

現在は、目の中に抗VEGF薬を注射してVEGFの働きを止める治療が主流です。

効果は高いのですが、眼内注射を数週間~数か月ごとに繰り返す必要があり、通院・費用などの面で大きな負担になります。

そこで、ずっとVEGFを低く保つことはできないだろうかこの挑戦が「持続抑制」(Sustained Suppression of VEGF)という考え方です。

では、なぜ“持続”が大事なのか!

眼内注射の投与間隔を延ばしていくと、うまくいく時期もあれば、再び滲出(水漏れ)が出る時期もあります。いわば、蛇口を開け閉めしながら水たまりを抑え込むようなもの。

とくに糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞では、毛細血管が詰まる→酸素不足→VEGFが増える→さらに毛細血管が詰まる、という悪循環が働くため、

“切れ目なくVEGFを抑える”ほうが理にかなうのです。長期的に、組織の傷みや視力の低下を抑えられる可能性があります。

どうやって長く抑えるの?

発想はシンプル。「目の中に効き目を長く残す」か「体の中で長く作ってもらう」か、です。

・小さな薬のタンク(ポート)を埋め込む
角膜の横に米粒サイズの容器を入れ、薬が少しずつ放出。→ 数か月ごとに補充すれば、注射の回数を大きく減らせます。※小さな手術が必要。

・上脈絡膜腔(強膜と脈絡膜の間)に薬を入れる
極細の針で眼球後方の網膜に薬が効きやすい場所に薬剤を投与。→ 前眼部(角膜など)への副作用を抑えつつ効率よく届けられる。※薬によって効き目の持続は違います。

・点眼(目薬)を工夫する
そのままでは網膜に届きにくいので、懸濁・ゲル化・結合の工夫で後ろまで届きやすく長く残るように設計中。
※実用化はこれから、という段階のものが多いです。

・遺伝子治療(“薬を作る設計図”を投与)
目の中で抗VEGFを長く作ってもらう方法。→ 投与回数の大幅削減が期待できます。※炎症などのリスク管理と、患者さんの選び方が大切。

・小分子薬+“ゆっくり溶ける粒・ジェル”
目の中で数か月~1年かけて溶けるように作り、薬を持続的に放出。→ 外来で扱いやすい一方、薬ごとの効き方・安全性は異なるため見極めが必要。

近い将来の診療はこう変わる!?

・治療の選択肢が増える:上述の治療薬の中には第3相臨床試験まで進んだ製品がいくつかあり、近い将来、臨床現場での使用が可能となりそうです。現在の治療方法に加え、新たな薬剤の登場で、治療の選択肢が広がります。

・在宅モニタリングとの連携:家庭用OCT(光干渉断層計検査)や遠隔診療が広がれば、必要な時だけ医療機関を受診するという治療が現実的になります。

・治療の目標は「視力を守りつつ、生活を守る」:見え方を安定させることはもちろん、通院・費用・時間の負担を下げることも、今後登場する治療の成果として期待されます。

抗VEGF注射は確かな治療法ですが、VEGFを切れ目なく抑え込むことができると、病気の活動性に影響されず、長期的に網膜・脈絡膜を守れる可能性が高まります。

方法は一つではありません。小さな貯蔵タンク、脈絡膜上腔への投与、点眼、遺伝子治療、デポ製剤。それぞれの利点と注意点を理解し、患者さんと相談しながら治療法を選ぶ時代が到来しそうです。

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