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散瞳検査と急性緑内障発作のリスク~瞳を広げる検査は安全なの?~

眼科では、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、緑内障など、目の奥にある「網膜」や「視神経」を詳しく調べるために、「散瞳(さんどう)検査」を行うことがあります。

これは点眼薬で瞳を広げて、奥までしっかり見えるようにする検査です。

見やすくなる反面、「目の中の圧が上がる」「急に目が痛くなる」といった副作用を心配される方もいます。

今回は、JAMA Ophthalmologyに掲載された南カリフォルニア大学からの最新の研究をもとに、散瞳の安全性についてわかりやすくご紹介します。

散瞳後の「急性緑内障発作」とは?

目の中には房水(ぼうすい)という液体が流れています。

この房水の通り道が何らかの理由で狭くなったり閉じてしまうと、眼圧が急激に上昇し、「急性緑内障発作」という状態になります。

これは突然、強い頭痛や吐き気、眼痛が生じる疾患で、放置すると視力低下や失明につながることもあります。

散瞳によって瞳孔が大きくなると、房水の流れが一時的に悪くなり、この「急性緑内障発作」を引き起こす可能性があるのではないか、という点が昔から懸念されてきました。

カリフォルニア州8万人の大規模研究

JAMA Ophthalmologyに掲載された今回の研究は、米国カリフォルニア州で行われた、糖尿病網膜症のスクリーニング眼底検査を受けた84,008人の患者さんを対象に、延べ16万8000回の散瞳後の経過を調べました。

その結果、急性緑内障発作を起こしたのはわずか4例(0.0024%)でした。

つまり、およそ4万回の散瞳につき1件程度の発症率です。

しかも全員が「反対の目にすでに急性緑内障発作が起こりやすい狭隅角という状態であった」女性で、ほとんどが散瞳翌日に症状を訴えています。

研究者は、糖尿病患者を対象とした定期的な散瞳スクリーニングにおいて、急性緑内障発作のリスクは非常に低いと結論づけています。

アジアでの研究結果も一致

この論文に対する招聘論評を行ったシンガポールの先生のコメントによると、シンガポールでは約1900人のアジア人を対象に調査し、散瞳後に急性緑内障発作を起こした人はいませんでした。

一部の人で眼圧が少し上がることがありましたが、多くは一過性の変化であり、問題となることはありませんでした。

急性緑内障発作が起こりやすい狭塞隅角の人を対象に、中国広州で行われたZAP試験では、急性緑内障発作の頻度は約0.06%(約1600回に1回)でした。

同じくシンガポールの別の研究でも、0.6%未満と報告されています。

つまり、一般的な散瞳検査で急性緑内障発作を起こすリスクはきわめて低いといえます。

リスクが高いのはどんな人?

急性緑内障発作は、もともと目の構造が「狭い隅角(狭隅角)」の人で起こりやすいとされています。このタイプの方は、

・遠視傾向がある

・小柄で眼球がやや小さい

・高齢・女性     などの特徴があることが多いとされています。

ただし、散瞳による発作は「散瞳の最中」ではなく、「薬の効果が切れかけて瞳孔が元に戻るとき」に起こることが多いと考えられています。

したがって、検査から数時間後に「目や頭が痛い」「かすむ」「吐き気がする」といった症状が出た場合は、すぐに眼科を受診することが大切です。

眼科ではどう対応しているか?

当院をはじめ、多くの眼科では、初めて散瞳を行う方にはあらかじめ隅角の状態を確認し、安全に検査を行っています。

もし狭隅角が疑われる場合には、散瞳を控えたり、眼圧上昇が起こりにくい点眼を使うなど、リスクを最小限に抑える配慮を行っています。

そのため、一般的な眼科での散瞳検査は非常に安全です。「初めての散瞳で少し不安」という方も、安心して検査を受けていただけます。

まとめ

散瞳は網膜や視神経の病気を早期発見するために欠かせない検査です。

世界中の大規模研究で、散瞳後に急性緑内障発作を起こすリスクは0.002~0.06%程度と極めて低いことがわかっています。

発作が起こるのは、薬の効果が切れ始める数時間後が多く、「目の痛み」「かすみ」「吐き気」などが出た場合は早めの受診が重要です。

眼科では、初回散瞳前に安全性を確認してから行っており、安心して検査を受けられます。

おわりに

糖尿病や加齢に伴う眼疾患は、自覚症状がなく進行することが少なくありません。

定期的な散瞳検査による眼底チェックは、視力を守るうえで非常に大切です。

当院では、初めて散瞳を受ける方にも安心して検査を受けていただけるよう、事前の確認を行っています。

「目の奥の検査は怖い」「散瞳が心配」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。

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