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見えにくさの原因に「老化細胞」?―注目の新薬「セノリティック」とは

「目がかすむ」「歪んで見える」―これは糖尿病の合併症として起こる「糖尿病黄斑浮腫」という目の病気のサインかもしれません。

実はいま、カナダ モントリオール大学から糖尿病黄斑浮腫に対してまったく新しい治療法がNature Medicineに報告され、注目を集めています。

キーワードは「老化細胞」と、それを取り除く“セノリティック”というお薬です。

糖尿病黄斑浮腫とは?

糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病によって網膜の中心部分である「黄斑」にむくみ(浮腫)が起こる病気です。視力が落ちたり、物が歪んで見えたりすることがあり、進行すると失明に至ることもあります。

現在の治療は、「血管内皮増殖因子(VEGF)」というタンパク質の働きを抑える薬(抗VEGF薬)を目の中に注射するのが主流です。しかし、この治療は数週間おきに繰り返し注射する必要があり、患者さんの負担が大きいのが課題です。

「老化細胞」が糖尿病黄斑浮腫の原因だった?

今回注目されたのは、糖尿病で傷んだ目の血管に“老化細胞(senescent cells)”がたまることで、血管から血液成分が漏れやすくなり、黄斑浮腫が悪化するという研究です。

老化細胞とは、「壊れかけているけれど死なずにそこに居座ってしまう細胞」のことで、身体のあちこちで炎症を起こしたり、他の細胞の働きを妨げたりする「厄介者」とも言えます。加齢や病気、ストレスによって増えることが知られています。

セノリティック(senolytic)薬とは?

セノリティックとは、こうした“老化細胞だけ”を狙って除去する新しいタイプの薬です。

がん治療にも似た仕組みで、壊れた細胞をそっと取り除くことで、周囲の正常な細胞の働きを取り戻すことができます。

これまで関節炎や肺線維症、認知症などの老化関連疾患で研究されていましたが、なんと目の病気、特に糖尿病黄斑浮腫にも効果があることがわかってきたのです。

UBX1325という新薬の登場

今回、カナダ・モントリオール大学と米国Unity Biotechnology社の研究チームが開発したのが、「UBX1325」というセノリティック薬です。

この薬を目に1回注射するだけで、老化細胞を除去し、網膜血管からの漏れが減って、視力が改善するという結果が得られました。

驚くべきはその持続力。従来の抗VEGF薬が一般的に1〜3か月ごとに注射が必要なのに対し、UBX1325は「1回の注射で6か月以上効果が続いた」と報告されました。

第2相臨床試験(BEHOLD試験)では、これまでの治療でなかなか改善しなかった糖尿病黄斑浮腫の患者さんが、UBX1325を1回注射することで視力が改善したという結果が報告されています。

さらに、副作用はほとんど見られず、安全性についても問題はなかったそうです。

UBX1325は現在も第2相臨床試験の最終段階にあり、今後さらに大規模な試験を経て承認されれば、「頻繁な注射が不要な、まったく新しい糖尿病黄斑浮腫治療薬」として登場する可能性があります。

最後に:目の病気の「根本原因」に迫る時代へ

これまでの治療は、「病気の結果」にアプローチするものでしたが、老化細胞をターゲットにするという発想は、「病気の根本」に迫る新しい考え方です。

目の病気の治療は今、大きく変わろうとしています。
糖尿病をお持ちの方、糖尿病黄斑浮腫と診断された方にとっては、治療が楽になり、治療効果が長く持続し、見え方もより良くなる日が近づいているのかもしれません。

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