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萎縮型加齢黄斑変性に治療薬「アイザベイ」

2025年9月19日、厚生労働省は「アイザベイ(IZERVAY、一般名:アバシンカプタド ペゴル)」を、萎縮型加齢黄斑変性の進行を抑える治療薬として承認しました。

これは日本で初めて、萎縮型加齢黄斑変性に対する薬物治療が認められた大きなニュースです。今回は、この疾患と薬の効果、問題点、そして治療のこれからについて解説します。

萎縮型加齢黄斑変性とは?

加齢黄斑変性(AMD)は、網膜の中心にある「黄斑」という場所が障害される病気で、日本の失明原因の上位を占めています。大きく分けて「新生血管型(かつての滲出型)」と「萎縮型」の2つのタイプがあります。

・滲出型AMDは、網膜の下に異常な血管が生えてきて出血やむくみを起こすタイプで、現在は抗VEGF薬の注射で治療が可能です。

・萎縮型AMDは、網膜の細胞や網膜色素上皮が徐々に傷んでいき、地図のような萎縮病変が広がるタイプです。進行はゆっくりですが、失った視細胞は元に戻らないため、視力の低下や視野欠損がじわじわと進んでしまいます。

これまで萎縮型に対しては、有効な薬物治療がなく、サプリメントや生活習慣改善での予防・進行抑制にとどまっていました。そのため、「病気の進行を遅らせる薬」の登場が長く待ち望まれていました。

アイザベイの働き方

アイザベイは「補体(ほたい)システム」と呼ばれる体の免疫反応に関与するタンパク質の一つ、C5を阻害する薬です。近年の研究で、加齢黄斑変性(AMD)では補体系の過剰に活性化しており、補体系の過剰な活性化が網膜の細胞死を加速させることが分かってきました。

アイザベイは補体系の活性を抑えることで、萎縮の拡大スピードを遅らせます。

投与方法は、眼の中(硝子体)への注射です。

原則として毎月1回の治療が推奨されています。米国や欧州で行われた第3相大規模臨床試験では、偽薬と比べて萎縮病変拡大を1年で約18〜35%抑制できることが示されました。

完全に病気を止めることはできませんが、進行を確かに遅らせられるという点が評価され、日本でも承認につながりました。

アイザベイのメリット

・初めての選択肢:これまで治療手段がなかった萎縮型AMDに対し、薬物治療という新たな選択肢が登場しました。

・進行抑制:進行を抑えることで、日常生活への影響を遅らせることが期待されます。特に、中心部に病変が迫っている方ではメリットが大きいと考えられます。

・国際的な裏付け:複数の臨床試験で有効性が証明されており、日本でも承認に至ったことは大きな安心材料です。

課題と問題点

ただし、いくつかの課題もあります。

・視力を回復させる薬ではない:すでに失われた視力は戻らず、これ以上悪くならないように進行を遅らせる薬という位置づけです。

・注射を続ける必要がある:治療は毎月の硝子体注射で行われます。通院の負担が大きい点は課題です。

・副作用やリスク:新生血管型AMDに移行するリスクがやや高まるという報告もあり、経過観察が必須です。

・費用の問題:日本での薬価はまだ公表されていませんが、海外では高額な薬剤です。保険適用や自己負担額がどの程度になるのか、今後の大きな関心事です。

治療のこれから

アイザベイの承認により、日本でもようやく萎縮型AMDに対して積極的な治療を行う時代が到来しました。今後は以下のような動きが期待されます。

・診断の早期化:OCT(光干渉断層撮影)などを活用し、病気の進行をできるだけ早く発見して治療開始につなげることが重要になります。

・他の新薬の登場:米国ではC3阻害薬の「シフォブレ(Syfovre)」も承認されており、今後日本での導入や新たな薬剤の開発も見込まれます。

・細胞治療や再生医療:失われた網膜細胞を補う治療も研究が進んでおり、将来的には「進行を止める」だけでなく、「視力を取り戻す」ことが目標となっています。

まとめ

アイザベイの承認は、日本の眼科医療にとって歴史的な一歩です。萎縮型AMDはこれまで「進むのを見守るしかない」病気でしたが、今後は「進行を遅らせることができる」病気になりました。

もちろん、課題や限界もありますが、患者さんにとっては希望の持てるニュースです。

眼科領域では、新しい治療法や研究が続々と進んでいます。

アイザベイをきっかけに、さらに効果的で負担の少ない治療法が次々に実現していくことが期待されます。

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