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サプリメントを“医療”として正しく使う―眼科で効くもの・効かないもの、そして注意点

先週は違法なサプリメントをめぐる問題で、大手企業グループのトップが引責辞任を表明したとのニュースが報じられました。

サプリメントは「健康によさそう」というイメージで選ばれがちですが、法令(薬機法・景表法・健康増進法)に適合しているか/科学的根拠があるかを切り分けて考えることが欠かせません。

本稿では、サプリメントを民間療法ではなく、エビデンス(科学的根拠)に基づく“医療の道具”としてどう位置づけるかを、眼科の視点から整理します。

結論から言えば、効く場面は限定的です。加齢黄斑変性(AMD)に対するAREDS2配合サプリメントは確立した治療選択肢ですが、それ以外は確立した選択肢とは言い難いものが多く、安全性と表示の妥当性を含めた目利きが重要です。

1)サプリメントとは?(まず“法律”と“科学”を分けて理解)

  ・サプリは医薬品ではありません。承認審査や品質管理の枠組みが異なります。

  ・ラベルの“機能性”の表示や広告表示は薬機法・景表法・健康増進法の対象ですが、「法令に合う=医学的に効く」ではありません。

  ・反対に、エビデンスがあっても法令を逸脱した表示をすれば“違法サプリ”になります。

⇒ 「表示の適法性」と「臨床効果の確からしさ」は別ものです。両方を見る姿勢が大切です。

2)眼科で効果が確認された代表例:AREDS2配合サプリメント(加齢黄斑変性)

  対象:中期AMD、または片眼が進行期AMDの方
  効果:大規模試験(AREDS/AREDS2)で、進行期AMDへの移行リスクを5年で約25%低下

  基本配合(例):

   ・ルテイン 10 mg/ゼアキサンチン 2 mg

   ・ビタミンC 500 mg/ビタミンE 400 IU

   ・亜鉛 80 mg(または減量版)+銅 2 mg

  注意:

   ・予防目的(AMDのない人)や極早期AMDには効果不明。

   ・喫煙者・元喫煙者はβ-カロテンを避ける(肺がんリスク)。AREDS2はβ-カロテン不使用。

   ・亜鉛高用量は銅欠乏性貧血などの副作用に注意(日本人には低用量版が無難なことも)。

   ・抗VEGF剤眼内注射治療の代替にはなりません。あくまで進行抑制の補助です。

3)現時点で「効くと言いにくい」サプリ

  ・ドライアイ:オメガ3は大規模試験で有効性が不確か。魚摂取は良い習慣、サプリのみの効果は限定的。

  ・緑内障:進行抑制に有効といえる確立したサプリは無し。点眼や手術などが治療の柱。

  ・糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞:サプリで病勢を変える根拠は弱い。血糖・血圧・脂質の管理が最優先。

  ・“視力底上げ”系(ブルーベリー、アスタキサンチン等):小規模研究レベルで実臨床での確証は乏しい。

4)安全性と相互作用

  ・β-カロテン:喫煙者・元喫煙者は避ける。

  ・ビタミンE高用量:出血傾向や脳卒中の一部リスク報告。抗凝固薬との併用注意。

  ・ビタミンA:高用量は肝障害・骨粗鬆症・胎児毒性。

  ・亜鉛:長期高用量で銅欠乏性貧血・神経障害。

  ・ハーブ・天然=安全ではありません。処方薬との相互作用(抗血小板薬・免疫抑制薬など)に注意。

  ⇒ 持病・妊娠中・多剤服用の方は、必ず主治医に相談を。

5)製品の選び方(AREDS2ならここを見る)

  ・「AREDS2準拠」で配合量が公開されている。

  ・β-カロテン不使用(喫煙歴がある方)。

  ・亜鉛は低用量版を含め主治医と相談。

  ・検査値や既往(腎機能、貧血など)を踏まえ個別化。

  ・過量摂取をしない(「多いほど効く」は誤り)。

6)よくある質問(Q&A)

Q1:健康な40代。予防にルテインは?
A:必須ではありません。まずは食事(色の濃い野菜・果物・魚)と定期検診。家族歴が強い場合でも、検診が最優先。

Q2:湿性AMD治療中。サプリで注射回数を減らせる?
A:代替にはなりません。ただし反対眼が中期AMDならAREDS2は検討価値があります。主治医にご相談を。

Q3:ドラッグストアの“目に良い”サプリの効果は?
A:進行抑制の確かな根拠は限定的。広告より配合・用量・安全性を優先して評価を。

Q4:ニュースで不安。何を信じれば?
A:①法令適合(表示の妥当性)と②医学的根拠(対象・用量・アウトカム)が両立しているかを確認。迷えば主治医に相談を。

7)まとめ:サプリは“対象と配合が合えば”医療の味方に

  ・効く場面は限定。眼科で確立しているのは主にAREDS2(中期AMD)。

  ・安全性と相互作用、表示の適法性を軽視しない。

  ・食事・生活習慣・定期検診が土台。サプリは上にのせる補助です。

  ・情報が錯綜する今こそ、「誰に、何を、どの量で、どんな根拠で」を冷静に。

  ・必要な方には診察時にサプリをお勧めしています。

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