白内障手術:最近の多焦点眼内レンズについて
白内障は目の中にある水晶体という透明な凸レンズが徐々に濁る病気です。
白内障のほとんどは加齢性の変化として生じます。出生児は透明だった水晶体は、4歳頃から軽度の濁りが生じ、年齢とともに水晶体の濁りが進行します。
ステロイド剤の使用、糖尿病、眼外傷、アトピー性皮膚炎、強度近視なども白内障を促進させます。
初期の白内障では自覚症状がまったくありませんが、進行すると光が眩しく感じたり、かすんで見えたり、視力が低下するといった症状が現れます。
現在のところ、濁った水晶体を透明な状態に戻す治療法はありません。
手術が唯一の治療法です。
白内障手術では、水晶体の濁りを取り除き、眼内レンズを挿入します。
濁った水晶体を透明な眼内レンズに置き換えることで、視機能が改善・回復します。
眼内レンズは、単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズの2種類があります。
ヒトは水晶体の厚さや形を変化させることで、遠くから近くまでピントを合わせることができます。年齢を重ねることでピントを合わせる力が低下するため、次第に近くにピントが合わせにくくなり、手元が見えにくくなる老眼の症状が現れます。
眼内レンズは、水晶体のように厚さや形を変えることができません。
白内障手術の際に、裸眼で遠くが見えるような度数の単焦点眼内レンズを挿入すると、一般的に裸眼では手元が見えにくい老眼の症状が残ります。
逆に、手元が裸眼で見えるような度数の単焦点眼内レンズに取り替えると、遠くを見るときはメガネの装用が必要となります。
一方、多焦点眼内レンズは特殊な形状デザインにより、遠方〜中間距離〜近方にピントが合うようになっています。
白内障手術後にあまりメガネを使いたくない方にお勧めですが、単焦点眼内レンズと比べ、見え方のシャープさが少し劣るという欠点があります。また、暗い場所でライトを見ると光の輪やまぶしさを感じることがあります(グレアやハローと呼ばれています)。
ただ、多焦点眼内レンズは日進月歩の進化を遂げており、多焦点眼内レンズ特有のデメリットを軽減し、かつ、遠方から近方まで連続的に焦点が合うことが可能になってきています。
最近の多焦点眼内レンズでは、単焦点眼内レンズ並みのコントラスト(見え方の質)を得られるようになっており、グレアやハローといった症状をかなり抑えることができるようになっています。
最近の多焦点眼内レンズを使用した患者様のデータでは、従来の多焦点眼内レンズのデメリットであったハロー・グレアなどの異常光視症がほとんど生じず、これらの症状を実感する患者様はほぼ0%で、単焦点眼内レンズと違いがありませんでした。
以前の多焦点眼内レンズでは、夜間の運転で前方車のテールライトや信号機などの光の見え方に違和感が生じることで運転に支障をきたす可能性があり、夜間の運転が多い方には推奨できませんでした。最近の多焦点眼内レンズではグレアやハローの発生が極めて少なく、運転に必要な遠方の視界からメーターやナビの中間までをスムーズに連続して見ることができますので、自然な見え方によって不便なく運転ができるようになりました。
また、ゴルフではショットの際にボールを打つ瞬間から、打ったボールを目で追うという一連の動作がありますので、最近の多焦点眼内レンズは相性が良いでしょう。
多焦点眼内レンズではスマートフォンの操作など近くの作業も眼鏡が不要となり得ますが、とても細かい手元の作業のときには老眼鏡が必要になることがありますので、老眼鏡を装用したくない方には不向きかもしれません。
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズのどちらにも一長一短があります。
生活スタイルに合わせて選択していただくのが良いかと思います。
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理事長・院長