ヒドロキシクロロキン網膜症
- 2023.2.5
- ブログ
ヒドロキシクロロキンは、皮膚エリテマトーデスと全身性エリテマトーデスという皮膚や関節などに炎症が起きる病気の治療薬として、日本では2015年7月に承認された内服薬です。
このお薬は治療効果の高い薬剤なのですが、ごく稀にヒドロキシクロロキン網膜症と呼ばれる、網膜中央部の働きが徐々に悪くなり、放置すると視力が低下したり、物の色が分かりにくくなるなどの症状が生じる病気が起こります。
そのため、ヒドロキシクロロキンの投与開始前には、種々の眼科検査を行うとともに、
少なくとも年に1回、定期的に眼科検査を実施するように求められています。
さらに、以下のような方は、半年に1回は検査を受けるように推奨されています。
・腎機能障害・肝機能障害のある患者
・累積投与量が200gを超えた患者(1日200mg内服なら3年)
・視力障害のある患者
・高齢者
Annals of Internal Medicineの電子版に、ヒドロキシクロロキン網膜症の発症頻度に関する米国の研究結果が今年の1月に掲載されました。
この研究では、2004年から2020年にヒドロキシクロロキンを5年以上投与され、眼科検診を受けた18歳以上の患者を対象に、ヒドロキシクロロキン投与量とヒドロキシクロロキン網膜症の発症の有無や重症度を調査しました。
その結果、3325例中81例(2.4%)がヒドロキシクロロキン網膜症を発症し、
軽症56例、中等症17例、重症8例でした。
投与後10年以内に網膜症を発症した症例は2.5%、15年では8.6%でした。
15年での網膜症重症度は、軽症が5.9%、中等症が2.4%、重症が1.1%でした。
1日の内服量別の網膜症発症頻度は、体重1キロ当たり6mgを超えると21.6%、
5〜6mgで11.4%、5mg以下で2.7%でした。
ヒドロキシクロロキン網膜症は、内服期間が長いほど、1日の内服量が多いはど、
発症リスクが高まることが分かります。
視機能の低下を防ぐには、定期的な眼科検査を行い、網膜症を早期に発見し、
ヒドロキシクロロキンの内服を中止することが重要です。
用量を守り、定期的な眼科検査を行っていれば臨床的に問題となることは稀です。
カテゴリー
- お知らせ (34)
- ブログ (356)
- iPS細胞 (17)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (5)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (11)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (14)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (12)
- 加齢黄斑変性 (83)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (17)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (35)
- 紫外線 (1)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (13)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (10)
- 緑内障 (24)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (24)
- 近況報告 (74)
- 近視予防 (28)
- 飛蚊症・光視症 (13)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2024.3.15
- 白内障に関する患者様からのご質問
- 2024.3.8
- 眼科健診はどのタイミングで受けると良いのでしょうか?
- 2024.3.2
- 萎縮型加齢黄斑変性の治療薬剤:SyfovreとIzervay
- 2024.2.18
- 若年者の裂孔原性網膜剥離
- 2024.2.11
- 自宅照度が高齢眼科患者の自宅活動量を規定
- 2024.2.3
- 適度な運動は眼疾患を予防する
- 2024.1.27
- 網膜静脈閉塞症は脳卒中/心筋梗塞/死亡リスクが高い
- 2024.1.20
- 滲出型加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫に朗報
- 2024.1.14
- 強度近視では成人後も近視が進行しやすい
- 2024.1.6
- 眼疾患が転倒・骨折のリスクを高める