眼と人工知能(AI)
眼底写真1枚で、年齢や性別、喫煙歴、心血管疾患の重症度や慢性腎疾患発症リスクの判定が可能な時代が到来しそうです。
膨大な数の眼底写真とその症例の年齢や性別、病歴などの情報を人工知能(AI)に学習させた後、全く別の症例の眼底写真から、年齢・性別・喫煙歴・心血管疾患の有無や重症度・慢性腎疾患の発症リスクを人工知能に判定させたところ、80%ほどの一致率であったという研究が医学雑誌Lancet Digital Healthに報告されています。
眼底の網膜血管は、体の中で唯一、直接観察することができるので、古くから全身の動脈硬化の指標として使われていましたが、目視での観察では判定にばらつきがあり、現在はあまり利用されていません。
人工知能を活用することで、網膜血管などの状況から、動脈硬化や高血圧性の血管変化を評価し、心疾患や脳梗塞・脳出血などの疾患リスクについて、高い精度で判定可能となるようです。
眼底写真は瞬時に撮影できますので、定期的に繰り返しの撮影が可能です。
疾患管理や予防のために、動脈硬化や血管老化の防止への関心が高まり、食生活の改善や適度な運動を取り入れる方が増えています。
定期的に眼底写真を撮影し、人工知能を搭載した機器で動脈硬化や血管老化の様子を評価することで、日々の健康管理の成果を実感でき、モチベーションのアプ、ひいては健康の維持につながる日が訪れそうです。
以前、眼底写真から糖尿病網膜症の有無や病状の判定を行う人工知能を搭載した機器をFDA(米国食品医薬品局)が認可した話題を紹介しました。
現在、日本でこの機器の使用に向けた手続きが進んでいます。
眼科では、眼底写真以外にも光干渉断層計検査(OCT)などの画像を用いて、人工知能が緑内障や黄斑疾患を判定する機器の開発が進行中です。
人工知能が眼科医療のみならず、医療全般に活用されるようになると思われます。
カテゴリー
- お知らせ (42)
- ブログ (403)
- iPS細胞 (18)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (7)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (13)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (15)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (96)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (19)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (41)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (11)
- 緑内障 (26)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (27)
- 近況報告 (82)
- 近視予防 (35)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.3.16
- ポリープ状脈絡膜血管症と渦静脈
- 2025.3.10
- 次世代の眼科検査「DREAM OCT」とは?
- 2025.3.5
- 糖尿病網膜症による牽引性網膜剥離に対する27ゲージ硝子体手術
- 2025.2.24
- 毎日新聞朝刊『使えぬマイナ保険証の「愚行」視覚障害者、顔認証に「がくぜん」』
- 2025.2.16
- 強度近視よる近視性黄斑症の進行リスクと令和6年度学校保健統計
- 2025.2.8
- 加齢黄斑変性と抗凝固薬
- 2025.2.3
- iPS細胞由来立体網膜シートによる網膜色素変性症治療
- 2025.1.26
- 初期・中期加齢黄斑変性に対するフォトバイオモジュレーション
- 2025.1.19
- 笑いがドライアイの治療になる
- 2025.1.13
- 後天性眼瞼下垂の点眼治療剤