糖尿病黄斑浮腫の新たな治療薬:抗インテグリン薬
糖尿病黄斑浮腫に対する新たな治療薬(インテグリンというタンパク質の働きを抑制する薬剤)についての論文が、米国眼科学会の機関紙であるOphthalmologyの電子版に掲載されました。
糖尿病は高血糖が持続することで、体内の酸化ストレス(活性酸素の増加)やVEGF(血管内皮増殖因子)というタンンパク質が増加し、全身の血管、特に毛細血管と呼ばれる細い血管が障害される病気です。
目では、網膜の中心部である黄斑部の毛細血管から血液成分が血管周囲に染み出し(血管透過性亢進)、黄斑部がむくむと(黄斑浮腫)、視力が低下したり物が歪んで見えるようになります。
黄斑浮腫の持続により、視機能障害が進行します。
酸化ストレスによってインテグリンというタンパク質が増加し、黄斑浮腫が発生します。
現在、糖尿病黄斑浮腫の治療を目的に、インテグリンの作用を抑える2種類の薬剤の開発が進んでいます。
いずれの薬剤も、安全性や少数例での治療効果が確認されています。
多数例での検討試験を経て、糖尿病黄斑浮腫の治療薬として承認されるまでには数年かかるのではと思います。
現時点での糖尿病黄斑浮腫への治療は、VEGF(血管内皮増殖因子)というタンパク質の働きを抑える薬剤を、目の中に注射する治療が主流となっています。
VEGFは血管透過性を亢進させるタンパク質で、VEGFの働きを抑えることで、血管透過性が正常化し、黄斑浮腫が改善し、視機能の向上を得ることができます。
ただ、糖尿病黄斑浮腫の発症メカニズムは複雑で、VEGFや酸化ストレス、炎症などが誘因となります。
作用が異なる複数の薬剤を組み合わせることで、治療の向上につながることが期待されます。
抗インテグリン薬の登場が待たれます。
カテゴリー
- お知らせ (9)
- ブログ (415)
- iPS細胞 (18)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (13)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (16)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (101)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (19)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (45)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (3)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (11)
- 緑内障 (26)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (27)
- 近況報告 (82)
- 近視予防 (39)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (9)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.6.16
- GLP-1受容体作動薬と加齢黄斑変性との意外な関係
- 2025.6.9
- 糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF治療が効きにくい時、網膜前膜がカギかもしれません
- 2025.6.2
- テレビ・新聞で話題に!スマホやPC作業による“目の不調”、ご存じですか?
- 2025.5.27
- 「加齢黄斑変性」と“炎症”の深い関係
- 2025.5.21
- 「近視」と血液の関係? 血中成分からわかる“近視のなりやすさ”?
- 2025.5.11
- 「目の健康に!オメガ3脂肪酸が加齢黄斑変性(AMD)を防ぐかも?」
- 2025.4.30
- 小児近視進行抑制治療(リジュセア®ミニ点眼液0.025%)に関するよくあるご質問
- 2025.4.30
- 低濃度アトロピン点眼薬(リジュセアミニ点眼液)による近視進行抑制治療を開始します
- 2025.4.27
- 小児近視に対する赤色光治療に関する最新研究のご紹介
- 2025.4.23
- 新生血管型加齢黄斑変性の治療間隔ってどうやって決めてるの?