網膜静脈閉塞症 治療薬の開発
網膜静脈が詰まると静脈の内圧が上昇し、静脈が拡張・蛇行し、静脈から網膜に血液がしみ出し、網膜出血や網膜のむくみが生じます。
網膜の中央部分(黄斑)がむくむと(黄斑浮腫)、物がゆがんで見え、視力が低下します。
自然科学の優れた研究論文が掲載されるNature communicationsと言う科学雑誌に、網膜静脈閉塞症に対する新たな治療薬の可能性についての論文が掲載されました。
コロンビア大学(ニューヨーク)の研究チームは、マウスに実験的網膜静脈閉塞症を作成し、網膜血管の細胞内でカスパーゼ9という酵素の働きが増加することで、血管からの浸み出しの増加や網膜神経細胞の障害が亢進されることを明らかにしました。
さらに、カスパーゼ9の働きを抑える薬剤の点眼で、血管からの浸み出しや網膜神経細胞障害が抑制され、網膜機能が保護されることが確認されました。
以上の結果から、カスパーゼ9の抑制剤が網膜静脈閉塞症の新たな治療薬となる可能性だけではなく、糖尿病網膜症による黄斑浮腫や脳の血管が詰まる病気である脳梗塞の治療にも有効かもしれないと結論付けています。
研究チームは、健常人に対してカスパーゼ9の抑制剤を投与し、副作用の有無や投与量を検討する第1相の臨床治験を行いたいと述べています。
現在の網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫の治療は、抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬の眼内注射です。
抗VEGF薬の投与により黄斑浮腫が治り、視力や歪みが改善します。
治療開始当初は抗VEGF薬投与後2〜3ヶ月で黄斑浮腫が再発することが多いのですが、1〜2年を経過した頃には再発しなくなる症例が増えてきます。
1回の注射のみで再発しない症例がある一方、発症後2〜3年が経過しても追加治療が必要な患者様もおられ、投与回数にばらつきがみられます。
抗VEGF療法は、それ以前に行われていた黄斑部網膜に光凝固を施行する治療と比べ、黄斑浮腫の改善や視機能の向上にとても効果のある治療ですが、繰り返しの眼内注射を要するという問題点があります。
カスパーゼ9抑制剤の研究は緒に就いたばかりです。実際に人でもマウスと同様な有効性が確認されるのか、副作用はないのかなど、治療薬として認可されるまでには検証しなければならない幾つもの項目があります。
治療薬の開発には時間がかかりますが、有効かつ安全で患者様に負担の少ない治療法の開発を目指し、世界中で研究が行われています。
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理事長・院長