強度近視よる近視性黄斑症の進行リスクと令和6年度学校保健統計
世界中で10億人以上の方が近視で、そのうち約20〜30%が強度近視だと推定されています。近視の方は日本を含む東アジアやヨーロッパの地中海沿岸諸国で増加しており、強度近視に伴う視力障害は2000年から2050年までに7倍に増加し、世界的に失明の主要原因となると予想されています。
強度近視よる視力障害の主な原因は、網膜の中心部分である黄斑が障害される近視性黄斑症で、網黄斑部がゆっくりと進行性に萎縮する萎縮型、牽引により網膜分離症が進行する牽引型、黄斑新生血管が発生する新生血管型に分類されます。
本研究では、230人438眼の高度近視症例を平均4年以上にわたり経過観察しました。
その結果、近視性黄斑症は42%で進行し、特に後部ぶどう腫を有する眼での進行リスクが高いこと、近視性黄斑症のタイプ別では萎縮型が最も進行しやすく(21.9%)、次に牽引型(11.4%)が進行しやすいことが明らかとなりました。
また、黄斑部に後部ぶどう腫がある眼は黄斑部に後部ぶどう腫が無い眼よりも1.71 倍、眼軸長が1 mm 長くなるごとに1.10 倍、近視性黄斑症が進行しやすいことが明らかとなりました。
さらに、近視性黄斑症が進行した症例では進行していない症例よりも視力低下が明らかに大きいことが確認されました。
この結果は、後部ぶどう腫と眼軸長の管理が強度近視眼の視力予後にとって重要であることを示唆しています。
今後は、小児期に高度近視を発症した症例を追跡し、後部ぶどう腫の発生時期などを特定すること・近視進行抑制(オルソケラトロジー、低濃度アトロピン点眼、屋外活動の推奨)の効果が、後部ぶどう腫や近視性黄斑症のリスク低減に寄与するかなどについて検討することが求められます。
これらの知見により、強度近視症眼の視力を守るための新たな診療戦略が確立できると期待されます。
ところで、2月12日、文部科学省は令和6年度学校保健統計の確定値を公表しました。
今回の調査結果のポイントは、「裸眼視力1.0未満の者の割合は、学校段階が進むにつれて高くなっており、小学校で3割を超えて、中学校で6割程度、高等学校で7割程度となっている。」ことです。
児童・生徒の視力の悪化が年々進んでおり、裸眼の視力が「1.0未満」の割合が過去最高となりました。
高校では10年前と比べて15ポイント増え71.1%に、中学校や小学校でも約7ポイント増えて中学校で60.6%、小学校で36.8%という結果でした。
文部科学省は、視力の低下を防ぐには、長時間、近くのものを見続けないようにすることや、休み時間などにできるだけ外で過ごし太陽の光を浴びること、読書や勉強、スマホを見る際にはできるだけ明るい部屋で対象物から目を離し、30分に一度は20秒以上、目を休めることを推奨しています。
近視が進行し強度近視となり、後部ぶどう腫が生じ近視性黄斑症により視機能障害を来さないように、児童・生徒の目を守る取り組みが切望されます。
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