メラトニンは加齢黄斑変性の発症・進行を予防
メラトニンは日内リズムを整えるホルモンで、不眠症の治療などに応用されています。
メラトニンには抗酸化作用や消炎作用、抗血管新生作用に加え、細胞の代謝を司るミトコンドリアを保護する作用があることも報告されています。
加齢黄斑変性は酸化作用の亢進、黄斑での血管新生や細胞の脱落が病気の発症・進行に関与しているため、メラトニンが加齢黄斑変性の治療に有効な可能性が示唆されますが、現時点は明らかになっていません。
この点を解明するために行われた米国コール眼研究所の研究結果が7月号のJAMA Ophthalmologyに掲載されました。
この研究ではTriNetX社の12万人以上の医療データを利用し、加齢黄斑変性の有無やメラトニン服用の有無についての情報を収集し、解析しました。
その結果、メラトニンを内服している症例では加齢黄斑変性の発症リスクが低下すること、既に加齢黄斑変性を発症しているメラトニン内服症例では、加齢黄斑変性が進行する割合が、メラトニンを内服していない加齢黄斑変性症例よりも少ないことが明らかとなりました。
今回の研究結果は、メラトニンが加齢黄斑変性の発症・進行を抑制することを裏付けています。
ただ、より確実にメラトニンの有効性を実証するためには、
・加齢黄斑変性を発症していない症例を、メラトニン服用グループと服用しないグループに分けて経過を観察し、両グループでの加齢黄斑変性の発症頻度を比較する
・早期加齢黄斑変性の症例を、メラトニン服用グループと服用しないグループに分けて経過を観察し、進行期加齢黄斑変性に至った割合を両グループで比較する
という研究が必要です。
以前のブログで紹介したように、上述のような厳格な研究を経て、
加齢黄斑変性の進行を抑制する効果が実証されたサプリメントがあります。
ただこのサプリメントの研究では7年以上の経過観察が行われました。
予防効果の実証には、長い年月を要します。
メラトニン内服の安全性が報告されていますので、
研究が進み、メラトニンが加齢黄斑変性治療薬の一つに加わることが期待されます。
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