ダビンチ手術と緑内障
近年、ロボット支援腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術(いわゆるダビンチ手術)が普及してきました。
これに伴い、時折、当院通院中の患者様がダビンチ手術を受ける際に、執刀される先生からお問い合わせをいただくことが増えています。
ダビンチ手術は、手術を受ける患者様の負担を減らす術式として導入されたこれまでの腹腔鏡下手術・胸腔鏡下手術に、ロボット機能を組み合わせ発展させた手術です。
内視鏡カメラとアームを腹腔あるいは胸腔に挿入し、術者が3Dモニターを見ながら遠隔操作で装置を動かすと、その手の動きがコンピュータを通してロボットに忠実に伝わり、手術器具が連動して手術を行います。
傷口が小さく治りが早い手術で、手術中の出血量も少なく、術後の疼痛も軽減できるそうです。
ダビンチ手術の際、眼科に問い合わせが来るのは、前立腺全摘除術を受けられる緑内障患者様についてです。
前立腺全摘除ダビンチ手術では、腹腔を空気に置き換えることと、急な角度で頭が下がる体勢(急峻な低頭位)で手術が施行されるため、術中は眼圧(目の中の圧力)が上昇する傾向にあります。手術時間は6時間前後だそうです。
そのため、眼圧上昇が視機能障害を進行させる緑内障に対しては、前立腺全摘除ダビンチ手術が行われないことが多いそうです。
眼圧の正常値は10〜20mmHg(水銀柱)です。
緑内障では無い患者様の前立腺全摘除ダビンチ手術中に、麻酔科の先生が眼圧を測定したデータによると、手術開始1時間ほどで眼圧は30mmHgを超え、35 mmHgほどになる方もおられるようです。
元来、眼圧が上昇しやすい緑内障の患者様では、上記の値よりも更に高くなる可能性があります。
しかし、例えば40mmHgの眼圧が5時間続くと視機能にどれだけ影響を与えるかについては明確なデータがありません。
視野障害が軽度の緑内障患者様なら、ダビンチ手術による眼圧上昇が視機能に及ぼす影響はないのではと推測されます。
緑内障のために負担の少ないダビンチ手術が受けられないのは、もったいない話です。
緑内障患者様の眼圧が低頭位の姿勢でどこまで上昇するのかを検証し、緑内障患者様も安心してダビンチ手術を受けていただけるデータの収集が必要かと思います。
ところで、ダビンチ手術に限らず、手術の際の全身麻酔で使用する薬剤の中には、狭隅角眼や閉塞隅角緑内障に投与すると、極端に眼圧が上昇する緑内障発作を引き起こす薬剤があるため、狭隅角眼や閉塞隅角緑内障患者様では使用薬剤の変更が必要となります。
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理事長・院長