糖尿病治療GLP-1受容体作動薬と糖尿病網膜症
2000年代に入って作用機序の異なる数種類の糖尿病治療薬が登場したことで、糖尿病治療はさらに進歩し、糖尿病特有の細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)や動脈硬化性疾患(心臓冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)の発症・進展の阻止に寄与しています。
GLP-1受容体作動薬は日本人の糖尿病患者の大部分を占める2型糖尿病治療薬で、良好な血糖コントロールをもたらします。
GLP-1受容体作動薬は空腹時には働かず、食事をとって血糖値が高くなった時に働くため、低血糖を起こしにくく、体重減少をもたらすという薬剤で、さらに心臓冠動脈疾患や脳血管疾患の発症リスクを軽減できることも報告されています。
日本では2018年に週1回皮下投与の製剤が承認され、現在では経口薬も承認されています。
GLP-1受容体作動薬の心臓冠動脈疾患の発症予防に関して3300名弱の患者を検討したSUSTAIN-6研究では、心臓冠動脈疾患の発症を抑制する効果が確認されたものの、糖尿病網膜症の発症リスクを高めることが報告されました。
同様の目的で行われたLEADER研究でも心臓冠動脈疾患や脳血管疾患の発症抑制効果が確認され、一方、糖尿病網膜症について明らかな影響は認められませんでした。
総説論文(多数の既報論文を検討し、現状の見解を要約した論文)が掲載される眼科総説雑誌Survey of Ophthalmologyの最新号に、GLP-1受容体作動薬の糖尿病網膜症への影響について検討した米国Duke大学等の研究チームの論文が掲載されました。
その結果、GLP-1受容体作動薬は軽症糖尿病網膜症の発症リスクを高めるものの、重症糖尿病網膜症の発症リスクを軽減することが判明し、
GLP-1受容体作動薬を使用する場合は、眼底検査を従来薬よりも頻繁に行う必要があると結論付けています。
糖尿病患者さんは検査や薬剤処方などのために定期的に内科を受診しますので、内科医に眼科での眼底検査を促していただかねばなりません。
コロナ禍前は、内科医との情報交換の場や内科・眼科共通の講演会が開かれていましたが、コロナ禍以降はそのような機会が無くなりました。
早めに再開し、糖尿病患者さんの定期的眼底検査の必要性を内科医に伝えていきたいと思いますし、内科医から眼科医へのご要望を伺えるのではと期待しています。
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