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光干渉断層計の開発者がラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞

2023年度のラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞が、今や眼科診療に欠かせない検査となった光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)を開発、進歩させ、臨床現場での普及を推進したマサチューセッツ工科大学のジェームズ・フジモト教授ら3名の研究者に授与されました。

この賞は米国ラスカー財団が創設し、医学研究、特に臨床治療において優れた功績があった研究者に与えられる学術賞で、アメリカ医学界最高の賞とされており、世界的にもノーベル生理学・医学賞に次ぐ医学賞とみなされています。

光干渉断層計は、光の干渉(光は光波と呼ばれる波で、波と波が重なり合うと波が強め合ったり弱め合ったりする現象が干渉です)を利用して眼の断層画像を撮影する装置で、眼底および眼底断層像を画像化することができ、眼底疾患や緑内障などの早期発見や診断、経過観察に有用な検査です。

また、角膜や虹彩、隅角といった前眼部の断層像を画像化する検査機器も開発されています。

さらに最近は、光干渉断層計の画像から血管の画像を得る光干渉断層血管撮影が可能となり、従来は人によっては重篤なアレルギー反応が出ることのある造影剤を腕の血管から投与し施行していた眼底血管造影検査を、患者さんに負担を与えることなく、瞬時に眼底血管の状態を確認することができるようになりました。

当院には2種類の光干渉断層計/光干渉断層血管撮影の機器があり、機種によって検査可能な眼底の広さや深さ、解像度に特徴があるため、疾患や患者様の病状や経過に応じて使い分けて診療を行っています。

今回、光干渉断層計の開発者が臨床医学領域の名誉ある賞を授与された理由には、眼科領域に留まらない種々の診療科での光干渉断層計の活用の広がりが貢献していると思います。

例えば、最近では心臓の冠動脈内の評価にも盛んに使用されているようです。

約1mm弱の細いカテーテルを挿入し、血管内を目的部位まで光干渉断層計を進入させ、血管内面や血管壁内の構造を観察することができます。

心臓冠動脈の評価に用いる光干渉断層計は、従来から行われている血管内超音波検査と比べて解像度が高く、血管壁の石灰化や血栓などの評価に優れているとのことです。

実は私、受賞者のひとりであるマサチューセッツ工科大学のジェームズ・フジモト教授を、私がボストン留学中に診察したことがあります。

私のボスの診療施設をフジモト先生が受診され、その際に私も眼底などを診せていただきました。

私は黄斑部や硝子体の様子を念入りに観察しました。

フジモト先生が「どんなことがわかる検査なのか」とお訊ねになられましたので、私は黄斑部の重要性や、硝子体が黄斑疾患の病態に深く関わっていることを説明し、より詳細に観察でき、画像を記録に残すことができると、黄斑疾患の病態解明や治療の進歩に貢献できるのですがと話したことを記憶しています。

当時はフジモト先生らが光干渉断層計のプロトタイプを作成した頃で、今では釈迦に説法だったと恥ずかしく思っています。

その数年後、光干渉断層計の解像度が格段に向上し、黄斑と硝子体の解剖学的関連性が明瞭に観察でき、画像を記録として残せるようになり、黄斑疾患の臨床に大きく貢献することとなりました。

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