滲出型加齢黄斑変性の治療用ドラッグデリバリーシステム
今回は、JAMA Ophthalmology電子版に掲載された、滲出型加齢黄斑変性の治療用ドラッグデリバリーシステム臨床第3相試験での患者満足度調査の結果を紹介します。
このドラッグデリバリーシステムは2019年8月のブログで紹介しました。

ドラッグデリバリーシステムは、シリコン製のチューブを眼球壁に埋め込み、この中に滲出型加齢黄斑変性の治療薬である抗VEGF(血管内皮増殖因子)剤を注入します。
チューブの先端は眼内に出ており、抗VEGF剤が徐々に眼内へ放出されます。
6ヶ月毎、チューブの眼外側の端から特殊な針で抗VEGF剤をチューブ内に注入し、薬剤を補充します。
臨床第3相試験では既に、ドラッグデリバリーシステムに6ヶ月毎薬剤を補充する治療が、薬剤を眼内に毎月注射する治療法と同等の治療効果を有することが確認されています。
米国では昨年10月に滲出型加齢黄斑変性の治療薬として承認されました。
現在はさらに糖尿病黄斑浮腫や糖尿病網膜症の治療について臨床第3相試験が行われています。
JAMA Ophthalmology電子版に掲載された論文では、ドラッグデリバリーシステムの臨床第3相試験に参加した患者を対象に、アンケートを用いて治療に対する満足度調査が行われました。
その結果、ほぼ全ての患者が以前受けていた薬剤を目の中に注射する治療法よりも、ドラッグデリバリーシステムを利用した治療法に高い満足を感じていることが判明しました。
頻回に繰り返し必要となる目の中への注射が、如何に患者さんの負担となっているかを物語る結果となりました。
抗VEGF剤は、滲出型加齢黄斑変性によって低下した視力を改善させ、改善した視力を長期的に維持する効果が確認されており、第一選択の治療として世界中で行われています。
ただ視機能を維持するためには、何年にもわたり継続的に薬剤を目の中に注射する必要があり、患者さんにとって(病院に同伴するご家族にとっても)大きな負担となります。
そこで現在、従来の抗VEGF剤と比べ薬剤効果が長持ちし、目の中への注射回数が少なくて済む薬剤の開発が行われています。
ドラッグデリバリーシステムも患者の負担軽減を目的に開発されました。
ドラッグデリバリーシステムは滲出型加齢黄斑変性への治療法の一つとして、有用な選択肢になることが期待されます。
国内では今年3月、滲出型加齢黄斑変性に対するドラッグデリバリーシステムの臨床第1・2相試験が始まりました。2年後の適応申請を予定しているようです。
カテゴリー
- お知らせ (11)
- ブログ (465)
- iPS細胞 (19)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (9)
- アルツハイマー病 (8)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (35)
- サプリメント (15)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (17)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (15)
- 加齢黄斑変性 (114)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (2)
- 白内障 (25)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (55)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (4)
- 網膜剥離 (17)
- 網膜動脈閉塞 (8)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (14)
- 緑内障 (34)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (28)
- 近況報告 (85)
- 近視予防 (43)
- 飛蚊症・光視症 (16)
- 黄斑円孔 (5)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (12)
アーカイブ
最新の記事
- 2026.6.21
- 強い近視の方は緑内障に注意? ― 日本1400万人超の大規模研究からわかったこと
- 2026.6.14
- 「視力は良いのに見えにくい」― 網膜前膜で最初に低下するのは“読む力”かもしれません
- 2026.6.6
- 見えないところこそ大切に ― 手術室の空気環境を毎年確認しています
- 2026.5.31
- 白内障手術と同時に行う「iStent inject W」とは? ─ 最近の研究から見えてきたこと
- 2026.5.24
- 網膜の神経を守る“縁の下の力持ち” ― ミュラー細胞と新しい網膜保護の考え方
- 2026.5.16
- 「治療を休むと戻らない」―糖尿病黄斑浮腫で本当に怖いこと―
- 2026.5.14
- 眼瞼下垂に対するアップニーク®ミニ点眼液について
- 2026.5.9
- 「高い枕は目に良い?」― 緑内障と寝る姿勢の意外な関係
- 2026.5.4
- 5月1日、開業から10年が経ちました
- 2026.4.20
- 令和8年5月20日(水)診療について



理事長・院長