ファリシマブ:滲出型加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫の治療新薬
6月10日、中外製薬は滲出型加齢黄斑変性と糖尿病黄斑浮腫に対する治療薬ファリシマブの承認申請を厚生労働省に行いました。
ファリシマブは、このブログで何度か取り上げた注目の薬剤で、従来の治療薬を上回る効果と投与間隔の延長が期待されています。
ファリシマブは、滲出型加齢黄斑変性や黄斑浮腫などの病気を引き起こす
アンギオポエチン2(Ang-2)と血管内皮増殖因子(VEGF)の両方の働きを抑制する薬剤です。
アンギオポエチン2と血管内皮増殖因子は、血管構造を不安定化させ、
血管壁が脆くて出血しやすくなったり、血管内の成分が血管から周囲に漏れ出しやすくなったり、炎症を誘発する作用があります。
現在使用されている滲出型加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫に対する治療薬は、血管内皮増殖因子の働きのみを抑制する薬剤で、長期間に渡り、繰り返し眼内に薬剤を注射する必要があります。
繰り返しの眼内注射は負担が大きいため、投与回数を減らし良好な視機能を維持することが治療の課題となっており、この課題を克服するための薬剤としてファリシマブが注目されています。
ファリシマブは、アンギオポエチン2と血管内皮増殖因子の2つの作用を遮断することで血管構造を安定化させ、病的血管の形成(血管新生)や血管内の成分が周囲に漏れ出しやすくなる(血管透過性亢進)を抑制します。
ファリシマブの有効性と安全性を検証した国際共同臨床第3相試験では、
滲出型加齢黄斑変性と糖尿病黄斑浮腫のいずれの疾患に対しても、ファリシマブで治療した症例の約半数が、4か月毎の薬剤投与で良好な治療成績を得ることができ、約4分の3の症例で、薬剤投与間隔を3か月以上に延長することができ、既存の薬剤を2か月間隔で投与した症例の治療成績と差を認めませんでした。
ファリシマブは既存薬剤と比べ投与間隔の延長が可能で、治療回数を減らすことができる薬剤です。
通院の回数も減りますので、患者様のみならず、通院に付き添われるご家族の負担軽減も期待できます。
ファリシマブの承認が待たれます。
カテゴリー
- お知らせ (9)
- ブログ (409)
- iPS細胞 (18)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (13)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (15)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (98)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (19)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (43)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (11)
- 緑内障 (26)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (27)
- 近況報告 (82)
- 近視予防 (38)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.4.30
- 小児近視進行抑制治療(リジュセア®ミニ点眼液0.025%)に関するよくあるご質問
- 2025.4.30
- 低濃度アトロピン点眼薬(リジュセアミニ点眼液)による近視進行抑制治療を開始します
- 2025.4.27
- 小児近視に対する赤色光治療に関する最新研究のご紹介
- 2025.4.23
- 新生血管型加齢黄斑変性の治療間隔ってどうやって決めてるの?
- 2025.4.15
- 糖尿病の“見えない”網膜の変化をキャッチする新技術
- 2025.4.6
- 糖尿病患者の血圧管理に新たな指針:厳格な血圧コントロールが心臓と目を守る
- 2025.3.31
- 令和7年ゴールデンウイークの診療について
- 2025.3.29
- 児童・生徒の近視進行を抑える点眼薬が日本でも使用可能に〜低濃度アトロピンとは?〜
- 2025.3.28
- クレジットカード利用時の「暗証番号」必須化について
- 2025.3.22
- 糖尿病網膜症の新しい治療法「ポートデリバリーシステム(PDS)」とは?