遠隔操作で糖尿病網膜症に光凝固を施行
インターネットの5G(第5世代移動通信システム)を利用して、北京にいる眼科医が、1200キロ離れた浙江省(直線距離で札幌と広島間くらい)に在る網膜光凝固センターの糖尿病網膜症患者に対し、浙江省の光凝固機器を遠隔操作してリアルタイムで患者に光凝固を施行し、糖尿病網膜症の治療を行った論文が、JAMA Ophthalmologyの電子版に掲載されました。
この論文は衝撃的で、ついにここまで来たかという印象です。
さらにこの先にあるのは、医師がインターネットを介して遠隔地にある手術ロボットを操作するオンライン手術(遠隔手術)です。
5Gでは、従来の通信システムと比べ、大容量データを高速で送信できるようになるため、操作遅延の解消など、時間と空間の制限をなくし、オンライン手術の可能性をもたらすことが期待されています。
通常、眼科手術は手術を行う執刀医が顕微鏡を覗き、術野を観察しながら手術を行うのですが、三次元画像を作成できるビデオカメラを顕微鏡に搭載し、術野の映像をモニターに三次元画像として描出する製品がすでに市販されており、これを用いると執刀医は顕微鏡を覗くことなく、モニターに映る三次元画像で手術を遂行することができます。
この三次元画像を5Gを介して患者から遠く離れた所にいる執刀医に送り、この画像を観察しながら執刀医は手術ロボットを遠隔操作し、目の手術を行う。
もちろん、より高度な検査も検査機器を遠隔操作で行うことができそうです。
現在のオンライン診療は、パソコンやスマホを介して医師と患者が会話する、さらには血圧などの情報が共有できるといったイメージですが、
将来は、診察から検査・治療までの多くがオンライン診療で完結しそうです。
各地域の拠点施設でインタネート環境を整え、医療検査機器や手術支援機器を普及させることで、患者さんは長距離の移動をしなくても高度の医療を受けることができる日が訪れるのは間近かもしれません。
カテゴリー
- お知らせ (34)
- ブログ (343)
- iPS細胞 (17)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (5)
- アルツハイマー病 (6)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (11)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (13)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (12)
- 加齢黄斑変性 (77)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (15)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (32)
- 紫外線 (1)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (12)
- 網膜動脈閉塞 (6)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (8)
- 緑内障 (22)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (24)
- 近況報告 (74)
- 近視予防 (25)
- 飛蚊症・光視症 (13)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2023.12.3
- 令和4年度学校保健統計:裸眼視力1.0未満は小学校3割超・中学校約6割・高等学校約7割
- 2023.11.26
- 視力と認知症の関係について「日刊ゲンダイ」の取材を受けました
- 2023.11.16
- 眼球移植:米国ニューヨーク大学
- 2023.11.12
- 2023年度米国眼科学会総会:網膜分科会
- 2023.11.9
- 近未来の緑内障診療―米国眼科学会2023年
- 2023.10.27
- ファリシマブ、網膜静脈閉塞症黄斑浮腫に対し4ヶ月の投与間隔で視力改善を維持
- 2023.10.20
- AIを搭載した眼底疾患診断装置(RETFound)
- 2023.10.13
- 多焦点眼内レンズ白内障手術
- 2023.10.6
- 糖尿病治療GLP-1受容体作動薬と糖尿病網膜症
- 2023.10.2
- 光干渉断層計の開発者がラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞を受賞