萎縮型加齢黄斑変性に、いま治療という選択肢を:アイザベイが示す新しい可能性と治療を勧めたい患者さん像
萎縮型加齢黄斑変性(AMD)は、時間をかけて視機能を低下させていく病気です。
「地図状萎縮(GA)」と呼ばれる網膜細胞が失われる領域が徐々に拡大するため、視野の欠けや読書困難など、日常生活への影響が進行します。
これまで、萎縮型AMDに対しては有効な治療法がなく、「進行を見守るしかない」というのが現実でした。
しかし2025年、日本で初めて萎縮型AMDの進行を抑える治療薬アイザベイが承認され、治療の考え方は大きく変わろうとしています。
(米国では2023年8月に米国食品医薬品局FDAから承認を受けており、2025年は40~50万本が投与されたのではと推測されます。)
AMDは「炎症」と深く関係する病気
近年の研究により、AMDでは、補体系と呼ばれる免疫反応の過剰な活性化や慢性的な炎症が、病気の進行に強く関与していることが分かってきました。
特に遺伝的リスクが高い方では、こうした炎症反応がより顕著になることも報告されています。
これは、萎縮型AMDが単なる加齢現象ではなく、病態に介入できる余地がある疾患であることを意味します。
アイザベイとはどのような薬か
アイザベイは、補体系の中心的な因子であるC5を抑制する薬です。
過剰な炎症反応を抑えることで、網膜の細胞が失われていくスピードを遅らせることを目的としています。
治療は月1回の眼内注射で行われ、海外の臨床試験では、GAの拡大速度を有意に抑制する効果が示されました。
ただ、アイザベイは、視力を回復させる薬ではなく、「これ以上の悪化をできるだけ遅らせる」ことが期待できます。
治療を特に勧めたい患者さん像
すべての萎縮型AMDの方に、無条件で治療を勧めるわけではありません。
現時点で、アイザベイ治療を特に検討したいのは次のような患者さんです。
・すでに萎縮型AMDと診断されており、GA進行が確認されている方
・GAが黄斑中心に近づいている、あるいは今後及ぶ可能性が高い方
・視力はまだある程度保たれており、これ以上の低下を強く避けたい方
・読書、運転、仕事、趣味など、視機能が生活の質に直結している方
・通院や定期的な注射治療を受けることが可能な方
特に、「今はまだ見えているが、この先が心配」という段階の方にとって、進行を遅らせる意味は非常に大きいと考えられます。
知っておきたい課題と注意点
一方で、治療には現実的な負担も伴います。
・毎月の眼内注射が必要
・効果には個人差があり、進行を完全に止めるわけではない
そのため、治療を始めるかどうかは、病気の進行度・生活状況・ご本人の価値観を踏まえて慎重に判断することが重要です。
「何もできない」時代から、「守る治療」へ
萎縮型AMDは、進行してしまうと元に戻すことはできません。
しかし、進行を遅らせることで、
・見える期間を少しでも長く保つ
・生活の自立を維持する
・将来の選択肢を残す
ことが可能になります。
アイザベイは、萎縮型AMDに対して初めて「治療として介入できる」選択肢をもたらしました。
すべての方に必要な治療ではありませんが、適切な患者さんにとっては、将来を守るための大切な一手となり得ます。
萎縮型AMDの治療は、日本ではようやくスタートラインに立ったばかりです。
「進行しているから仕方がない」ではなく、「今できることを考える」時代が始まっています。
2月8日(日)、東京でアイザベイの講演会があり、出席して参りました。
当日は東京でも雪が積もり、全国的に大荒れの天気でした。
搭乗予定の新千歳空港便が欠航となり、9日早朝便で帰路につきました。
この便も1時間遅れの出発となり、受診予定の患者様には大変ご迷惑をおかけしてしまいましたことをお詫び申し上げます。
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理事長・院長