加齢黄斑変性の治療に関する論文がBJOに掲載されました
- 私が治療した加齢黄斑変性患者さんの6年間の治療成績を報告した論文が、British Journal of Ophthalmologyの電子版に掲載されました。
- British Journal of Ophthalmologyは1917年にイギリスで創刊された眼科領域の科学論文を掲載する雑誌です。歴史が古く、眼科領域では権威のある雑誌の一つです。
- 加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管には幾つかタイプがあり、その一つであるポリープ状脈絡膜血管症66例に対し抗血管内皮増殖因子療法を6年間行った治療成績を論文にしました。
- 6年という長期間の治療成績の報告は極めて少なく、この点が評価されたものと思います。
- ポリープ状脈絡膜血管症は日本人を含む東洋人に多いタイプの脈絡膜新生血管で、日本人では、脈絡膜新生血管の50%以上がポリープ状脈絡膜血管症です。
- 抗血管内皮増殖因子療法は第一選択となっている治療法で、新生血管の発育を抑える薬剤を眼の中に注射します。
- 治療により66例の平均視力は、治療開始から2年半までは治療開始時の視力と比べ明らかに改善していました。
- その後、やや低下傾向となり、治療開始から6年後の平均視力は治療開始時とほぼ同程度でした。
- 60%の症例が0.5以上の視力を維持することができました。
- 治療開始6年後の視力が治療開始時と比べ明らかに改善した症例は20%、悪化も20%でした。
- 6年間の薬剤注射の投与回数は、平均21.5回。
- 治療開始から5年目も6年目も、年に平均3.5回くらいの注射が必要でした。
- 今回の結果は、抗血管内皮増殖因子療法が、加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管患者の視力を、長期間良好に維持可能なことを示しています。
- 一方、長期にわたり繰り返しの薬剤注射が必要なことも示しています。
- 治療を行わないと視力がどんどん低下する病気ですので、治療の継続が大切です。
- 患者さんは加齢黄斑変性と長く付き合っていかなければなりません。
- 通院間隔や注射間隔などは患者さんの病状により異なります。
- 保険診療で認可されている薬剤ですが、薬剤代が高く、金銭的な負担もあります。
- 主治医と話し合いながら、上手に病気と付き合っていきましょう。
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