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6月1日(土)、埼玉県大宮市にお招きいただき、滲出型加齢黄斑変性の長期治療について講演して参りました。
懇親会の席で、先日のブログで紹介したノバルテイス社の新薬や、アラガン社が開発中の新薬が話題に上りました。
今回はアラガン社が開発中の滲出型加齢黄斑変性治療薬剤について紹介します。
滲出型加齢黄斑変性の治療薬は、脈絡膜新生血管の発生・伸展に重要な役割を担う血管内皮増殖因子という蛋白質の作用を抑制する薬効を有しています。
現行の薬剤やノバルテイス社の新薬は、いずれも抗体という物質を基に創薬されています。
抗体は体内に進入した異物に結合し、異物の作用を抑える蛋白質です。
この仕組みを利用し、作用を抑えたい蛋白質に結合することが出来る抗体類似構造の薬剤が作られています。
類似構造の薬剤は、がんやリュウマチなどの膠原病治療にも応用されており、創薬の潮流となっています。
アラガン社が開発中の新薬は、アンキリン反復蛋白質という、新しい概念に基づき創薬されました。
アンキリン反復蛋白質は、従来の抗体類似構造の薬剤と比べ、
作用を抑制したい蛋白質との結合能力が非常に高く、薬効の持続も長く、
少ない薬剤量で効力を発揮することが期待できます。
また薬剤の大きさ(分子量)が小さく、体の組織への深達性が良いと考えられます。
アンキリン反復蛋白質は熱に強く、水にもよく溶けるため、高濃度の薬剤を作ることも可能です。
以上の特徴から、アンキリン反復蛋白質製剤は治療効果が高く、かつ薬効の持続時間が長いことで、少ない薬剤投与回数で良好な治療効果を得ることが可能と思われます。
本製剤の滲出型加齢黄斑変性に対する治験結果が報告されており、
3か月毎の硝子体注射で、従来薬剤の毎月投与と同等の視力改善が得られました。
ただ、10%弱の患者さんに軽い炎症が認められ、消炎点眼薬で改善すると報告されています。
ほぼ0%と報告されている従来薬と比べると、少々気になる結果です。
薬剤の効果は、試験管の中とヒトの体の中では異なることがあります。
今後の臨床研究のさらなる結果が待たれます。