突然、片目が見えなくなった
- 「片眼(視野全体あるいは一部分)が突然見えなくなった。数分から数十分で元どおりに戻った(あるいは回復せず見えないまま)。」
- こんな症状を訴えて来院されるご年配の患者さんがおられます。
- この症状はズバリ、急性網膜虚血の可能性があります。
- 急性網膜虚血には、一過性網膜虚血発作(一過性黒内障とも呼ばれます)、網膜動脈分枝閉塞症、網膜中心動脈閉塞症という疾患が含まれます。
- アメリカ眼学会の機関誌Ophthalmologyの10月号に、急性網膜虚血の管理に関する総説が掲載されました。
- 網膜は目の内側の2/3を覆っていて、光を感じ取り脳へ情報を伝達するための神経の膜です。この網膜を栄養する動脈がつまり、網膜の機能障害をもたらす疾患群が急性網膜虚血です。
- 原因は頸動脈の動脈硬化が最も多く、高齢者に多い疾患です。
- 動脈硬化を起こした血管には脂肪や血栓が溜まりやすく、血栓が剥がれて脳に向かって流れて行く先の一つに網膜動脈があります。
- 剥がれ落ちた血栓は小さくもろいため、動脈をふさいでも溶けてしまうことが多く、目の前が暗くなる症状は一時的で、5~10分で解消します。これが、一過性網膜虚血発作です。
- ところが血栓が溶けず、網膜全体の機能障害が残った疾患が、網膜中心動脈閉塞症です。
- 溶けて小さくなった血栓が流れていき、網膜動脈の細い枝をつまらせると、この動脈枝に栄養されていた領域の網膜が障害され、この部分の視野が見えなくなります。これが網膜動脈分枝閉塞症です。
- 先ほどのOphthalmologyに掲載された総説では、まず類似の症状を起こす疾患を鑑別し、正しく診断した後、ただちに脳外科を受診させるように眼科医を促しています。
- その理由は、急性網膜虚血を患った患者の中に、数日後に脳梗塞を発症する方がいることが報告されているからです。
- しかも一過性網膜虚血発作を何度か起こしている方は、脳梗塞発症のリスクが高いことも知られています。
- 症状が一時的だと言って高を括っていてはいけません。
カテゴリー
- お知らせ (34)
- ブログ (333)
- iPS細胞 (17)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (4)
- アルツハイマー病 (6)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (11)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (13)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (11)
- 加齢黄斑変性 (76)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (14)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (31)
- 紫外線 (1)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (12)
- 網膜動脈閉塞 (6)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (7)
- 緑内障 (21)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (24)
- 近況報告 (72)
- 近視予防 (24)
- 飛蚊症・光視症 (13)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2023.9.21
- 子供たちの目を守るために:文部科学省啓発資料
- 2023.9.13
- カルシウム拮抗薬は緑内障を進行させる?
- 2023.9.10
- 論文がJpn J Ophthalmolに受理されました
- 2023.9.1
- 萎縮型加齢黄斑変性に対する治療薬
- 2023.8.24
- 遺伝性網膜ジストロフィーの遺伝子治療薬ルクスターナ
- 2023.8.19
- 総脂質と飽和脂肪酸の摂取比率が多い糖尿病患者は、糖尿病網膜症になりやすい
- 2023.8.14
- 受動喫煙の子供は近視になりやすい
- 2023.8.5
- Reducing the Risks of Nuclear War—The Role of Health Professionals
- 2023.7.27
- 盛夏の網膜動脈閉塞・静脈閉塞症
- 2023.7.22
- 視機能が悪いと認知症になりやすい