眼疾患が転倒・骨折のリスクを高める
今年最初の話題は、昨年末JAMA Ophthalmologyの電子版に掲載された、眼疾患と高齢者の転倒や骨折との関連について検討した英国マンチェスター大学の論文です。
この研究では、高齢者に視覚障害を引き起こす主要疾患である白内障・加齢黄斑変性・緑内障を有する患者の転倒ならびに骨折のリスクを検討することを目的に、
2007年から2020年までの英国大規模プライマリーケアデータベースの情報を解析しました。
41万人以上の白内障患者、7万6千人近くの加齢黄斑変性患者、9万人以上の緑内障患者の転倒と骨折の頻度を、年齢・性別・全身状態をマッチさせたそれぞれの眼疾患を有さない約200万人、37万人、45万人と比較した結果、
転倒リスクは、白内障患者では36%、加齢黄斑変性患者では25%、緑内障患者では38%増加することが判明しました。
また、骨折のリスクは、白内障患者では28%、加齢黄斑変性患者では18%、緑内障患者では31%増加していました。
さらに骨折を腰・脊柱・前腕・顔面・骨盤・大腿・下肢と行った部位別に検討したところ、上述の眼疾患を有する患者では、いずれの部位についても骨折のリスクが高まることが明らかとなりました。
高齢者では、転倒が骨折や頭部外傷などの大けがにつながりやすく、それが誘因となり介護が必要となる危険性があります。
厚生労働省が行なった「令和元年国民生活基礎調査」によると、高齢者の介護が必要となった主な原因は、認知症、脳血管疾患(脳卒中)、高齢による衰弱と続き、「骨折・転倒」が12.5%で、4番目の多さでした。
初期の眼疾患は無症状であることが多く、時に見にくさや不快感を自覚することがあります。これを放置していると疾患が進行し、回復し難いし機能障害を招きます。
早期に発見できれば、適切な予防・治療が可能となり、進行を遅らせること、症状を緩和させることが期待できます。
適切に治療を受け、視機能を保つことで、転倒や骨折のリスクを軽減し、健康生活の維持につながると思われます。
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