アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が保険適用に
12月13日、アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の価格が、患者1人当たり年間およそ298万円と設定され、12月20日から保険適用となることが決まりました。
アルツハイマー病患者の脳には、症状が現れる20~30年前から“アミロイドベータ”という異常タンパクが溜まり始めます。
レカネマブは脳に蓄積するアミロイドベータを除去することで、早期アルツハイマー病患者の病状進行を抑制します。
以前のブログで、レカネマブの使用が承認されたことをお伝えしましたが、保険適用になっていなかったため、実際には治療に使い難い状況が続いていました。
今回、保険適応となったことで、治療適応のある患者さんへの使用がしやすくなり、たくさんの患者さんへの治療が開始されるものと思われます。
レカネマブについてはこのブログで何度か取り上げてきました。
眼科医がこの薬剤に注目している理由は、アミロイドベータは脳のみならず網膜にも溜まり、加齢黄斑変性の初期病変であるドルーゼンの構成成分となるからです。
初期病変のドルーゼンが進行し重症の加齢黄斑変性になると、物が歪んで見えるようになり、視野の中央が暗く欠け、視力が低下し、しかも無治療ではこれらの症状が悪化していき、重篤な視機能障害をもたらします。
アルツハイマー病患者は加齢黄斑変性の発症リスクが高いことが知られており、アルツハイマー病と加齢黄斑変性の発症に何らかの関連性があると考えられれいます。
レカネマブは脳に蓄積したアミロイドベータのみならず、網膜に蓄積したアミロイドベータの除去も期待されます。
レカネマブの保険適応により本邦での使用が増えると、レカネマブの投与を受ける患者の中に加齢黄斑変性を有する患者がおり、治療によりドルーゼンが減少・改善したという結果が報告されるのではと思っています。
先日、JAMA Ophthalmologyの電子版に、「メトホルミンという糖尿病治療薬には加齢黄斑変性の発症を抑制する作用がある」というシカゴ大学の研究が掲載されました。
メトホルミンと同様に、近い将来、「レカネマブは加齢黄斑変性の発症を抑制する」と、JAMA Ophthalmologyのような権威ある医学雑誌に報告されるのではと期待しています。
カテゴリー
- お知らせ (9)
- ブログ (409)
- iPS細胞 (18)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (13)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (15)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (98)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (19)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (43)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (11)
- 緑内障 (26)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (27)
- 近況報告 (82)
- 近視予防 (38)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.4.30
- 小児近視進行抑制治療(リジュセア®ミニ点眼液0.025%)に関するよくあるご質問
- 2025.4.30
- 低濃度アトロピン点眼薬(リジュセアミニ点眼液)による近視進行抑制治療を開始します
- 2025.4.27
- 小児近視に対する赤色光治療に関する最新研究のご紹介
- 2025.4.23
- 新生血管型加齢黄斑変性の治療間隔ってどうやって決めてるの?
- 2025.4.15
- 糖尿病の“見えない”網膜の変化をキャッチする新技術
- 2025.4.6
- 糖尿病患者の血圧管理に新たな指針:厳格な血圧コントロールが心臓と目を守る
- 2025.3.31
- 令和7年ゴールデンウイークの診療について
- 2025.3.29
- 児童・生徒の近視進行を抑える点眼薬が日本でも使用可能に〜低濃度アトロピンとは?〜
- 2025.3.28
- クレジットカード利用時の「暗証番号」必須化について
- 2025.3.22
- 糖尿病網膜症の新しい治療法「ポートデリバリーシステム(PDS)」とは?