人工涙液点眼の細菌汚染
- 2023.5.25
- ブログ
今年3月のJAMA Ophthalmology電子版に、人工涙液の使用中に抗菌剤が効きにくい緑膿菌による角膜潰瘍を発症したマイアミ大学からの症例報告が掲載され、これを受け、点眼容器の細菌汚染について警鐘を鳴らす雑誌編者側からのコメントが5月の電子版に掲載されました。
人工涙液は主にドライアイの治療に使用される点眼薬で、その名の通り涙に近い成分になっています。
医療機関で処方する点眼薬の多くは、開封後に点眼容器の中で細菌が増えないように防腐剤が少量入っています。
ところが防腐剤で、角膜や結膜といった目の表面が傷つく方が稀におられます。
特にドライアイの方は涙の量や性状の変化で目の表面に傷がつきやすい状態となっており、治療のために点眼薬を使用することで、防腐剤による影響を受けやすくなっています。
そのためドライアイの治療に使用される人工涙液の点眼薬には、防腐剤が入っていないものがあり、防腐剤入りの点眼薬と比べ、点眼容器の中で細菌が増える危険性があります。
目薬をさす時に、点眼容器の先が目やまつ毛に触れると、細菌が点眼容器の中に入ってしまいます。
防腐剤が入っていない点眼薬では、点眼容器に入った細菌が増殖しやすいので、点眼容器の先が眼やまつ毛に触れないように、特に気をつけなければなりません。
ドライアイで目の表面に傷がついていると、細菌への抵抗性が弱くなっており、JAMA Ophthalmologyの報告例では、点眼容器内の細菌が目の表面で増殖したと思われます。
防腐剤の入っている点眼薬の使用期間は、開封してから概ね1か月、
防腐剤の入っていない点眼薬では1週間から10日以内です。
カテゴリー
- お知らせ (36)
- ブログ (373)
- iPS細胞 (17)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (5)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (12)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (14)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (12)
- 加齢黄斑変性 (90)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (17)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (39)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (10)
- 緑内障 (26)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (24)
- 近況報告 (78)
- 近視予防 (30)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2024.7.26
- メラトニンは加齢黄斑変性の発症・進行を予防
- 2024.7.20
- 眼科コメディカルセミナー2024
- 2024.7.11
- 減量薬は前部虚血性視神経症のリスクあり?
- 2024.7.4
- 中外製薬 眼科医配布パンフレット「Ask the expert in nAMD」
- 2024.7.1
- Retina update seminar in Chugoku〜明日から役に立つアレ!〜
- 2024.6.14
- 「目の紫外線対策」- 札幌テレビ「どさんこワイドニュース」
- 2024.6.7
- 裂孔原性網膜剥離は世界的に増加傾向です
- 2024.6.1
- 慢性腎臓病は加齢黄斑変性を進行させる
- 2024.5.28
- 眼疾患では気付かぬうちに視機能障害が進んでしまう
- 2024.5.18
- 加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫に対する抗VEGF療法で自動車運転に必要な視機能の維持を