首のマッサージと飛蚊症
うつ伏せの姿勢で頭と首のマッサージを受けた後に左眼に飛蚊症が生じたトロント大学の症例写真がOphthalmologyに掲載されました。
症例は41歳の女性で、特発性頭蓋内圧亢進症の既往がある方でした。
眼底検査では両眼の視神経乳頭(視神経の目から脳への出口)が腫脹し、左眼は腫脹した視神経乳頭から眼内に少量の出血が認められ、飛蚊症を引き起こしたようです。
首のマッサージをすることで、首の血管が圧迫され、脳から首への血液排出が悪くなり、脳に血液が滞ったことで、元来、高めの頭蓋内圧がさらに上昇し、視神経乳頭の静脈圧も高まり、静脈が破れて出血したのであろうと報告では考察しています。
特発性頭蓋内圧亢進症は、明らかな病気が無いにも関わらず頭蓋内圧が上昇する病気で、原因は分かっていないようですが、脳からの血液を排出する太い静脈が細いために、脳からの血液排出が遅れ、血液が溜まることで、頭蓋内の圧力が高くなる方がおられるようです。
この症例と眼底所見が類似する、バルサルバ網膜症という病気があります。
バルサルバ網膜症は主に、網膜中央の黄斑部網膜の内面に出血する病気です。
息を止めていきむと胸腔内圧が急激に上昇し、目から心臓への血液の流れが悪くなり、目の中の静脈血管の内圧が高まり、網膜表層血管が破れて出血すると考えられています。
便秘時にいきんだり、咳や嘔吐などでバルサルバ網膜症を発症することがあります。
また、筋トレでバーベルを持ち上げる際に息を止めると、胸腔内圧が急激に上昇しますので、バルサルバ網膜症をまねく可能性がありますので、ご留意ください。
カテゴリー
- お知らせ (9)
- ブログ (409)
- iPS細胞 (18)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (13)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (15)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (98)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (19)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (43)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (11)
- 緑内障 (26)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (27)
- 近況報告 (82)
- 近視予防 (38)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.4.30
- 小児近視進行抑制治療(リジュセア®ミニ点眼液0.025%)に関するよくあるご質問
- 2025.4.30
- 低濃度アトロピン点眼薬(リジュセアミニ点眼液)による近視進行抑制治療を開始します
- 2025.4.27
- 小児近視に対する赤色光治療に関する最新研究のご紹介
- 2025.4.23
- 新生血管型加齢黄斑変性の治療間隔ってどうやって決めてるの?
- 2025.4.15
- 糖尿病の“見えない”網膜の変化をキャッチする新技術
- 2025.4.6
- 糖尿病患者の血圧管理に新たな指針:厳格な血圧コントロールが心臓と目を守る
- 2025.3.31
- 令和7年ゴールデンウイークの診療について
- 2025.3.29
- 児童・生徒の近視進行を抑える点眼薬が日本でも使用可能に〜低濃度アトロピンとは?〜
- 2025.3.28
- クレジットカード利用時の「暗証番号」必須化について
- 2025.3.22
- 糖尿病網膜症の新しい治療法「ポートデリバリーシステム(PDS)」とは?