アルコール摂取と白内障
東海大学公衆衛生学と東京慈恵会医科大学眼科の研究チームが、日本人約3万人のデータを用いて、アルコール摂取と手術を要する白内障の発症リスクの関係について研究した論文が、昨年11月、電子ジャーナルScientific Reportsに掲載されました。
この研究では、飲酒が頻繁・1日当たりの飲酒量が多い・生涯累積摂取量が多い人ほど、白内障手術を受ける割合が高いという結果でした。
飲酒習慣のない人と比べ、ほぼ毎日お酒を飲んでいる人の白内障手術を受けるリスクが1.3倍、1日当たりの飲酒量が2ドリンク(日本酒なら1合、ビールは500ml、缶チュウーハイは350ml、ワインならグラス2杯に相当します)以下でも1.13倍と高かったそうです。
この結果から、「日本人では飲酒量が少なめでも白内障のリスクが高まる可能性があるため、白内障患者に対しては、飲酒量を抑えるように指導することが推奨される」と結論付けています。
実はこの研究結果は、今までの報告とは相反するもので、
従来はアルコール摂取が白内障手術のリスクを下げるという報告が大半です。
例えば、2021年のOphthalmologyに掲載された約47万人の英国人のデータを解析した研究では、アルコール摂取は白内障手術のリスクを減らし、特にワインは他のアルコール以上に効果が強かったと報告しています。
また豪州の検討でもアルコール摂取は白内障手術のリスクを減らすと報告されています。
一方、スウェーデンでの検討では、アルコール摂取と白内障手術リスクの関連性は認められませんでした。
これらの結果の違いは人種によるものなのか、データの集積方法による影響なのか、あるいは研究対象に偏りがあったのかなど、いろいろな要因が考えられます。
白内障は長い年月をかけて徐々に進行する疾患で、紫外線や活性酸素など、いろいろな要因で進行すると考えられていますので、アルコールと白内障の関連性を突き止めるのはなかなか難しい課題のようです。
今後も日本人を対象とした更なる大規模な研究が必要かもしれません。
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