飽和脂肪酸と加齢黄斑変性
慶應大学眼科の研究グループが、茨城県筑西市に在住する40歳以上の5,394人を対象に、
眼科検査、全身状態の評価とし身長・体重・血圧測定・採血検査を行い、さらに食事状況や栄養摂取状況をアンケート調査し、脂肪酸と加齢黄斑変性の発生状況との関係について検討した研究結果が Transl Vis Sci Technol の2023年1月号に掲載されました。
その結果、男性では、飽和脂肪酸の摂取量が多いほど加齢黄斑変性の頻度が低く、
女性では、リノレン酸の摂取量のみに加齢黄斑変性の頻度との関連を認めました。
欧米からの研究では、飽和脂肪酸の摂取が多くなると加齢黄斑変性の発症リスクが高まるというものが多いのですが、
山形県鶴岡市の市民を対象とした研究では、飽和脂肪酸の摂取量が多いほど加齢黄斑変性の発症リスクが低いという結果で、今回の筑西市の結果も同様であり、欧米人の研究とは逆の結果となっています。
飽和脂肪酸は動脈硬化のリスクを高めるなど、一般的に不飽和脂肪酸と比べると悪玉のイメージです。
日本人、特に男性では欧米人と比べ、飽和脂肪酸の摂取量が半分程度と少ないため、
飽和脂肪酸の摂取不足が欧米人の研究結果との違いをもたらしていると推測しており、
飽和脂肪酸の摂取不足が、加齢黄斑変性の発症に関わる脈絡膜血管の障害を促すのであろうと考察しています。
飽和脂肪酸は摂り過ぎても不足していてもいけないようです。
偏りのない食生活が大切なのかと思います。
カテゴリー
- お知らせ (34)
- ブログ (362)
- iPS細胞 (17)
- IT眼症 (8)
- OCTアンギオ (5)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (34)
- サプリメント (12)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (14)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (12)
- 加齢黄斑変性 (85)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (17)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (11)
- 糖尿病網膜症 (35)
- 紫外線 (1)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (2)
- 網膜剥離 (13)
- 網膜動脈閉塞 (7)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (10)
- 緑内障 (24)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (24)
- 近況報告 (75)
- 近視予防 (30)
- 飛蚊症・光視症 (13)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (2)
- 未分類 (8)
アーカイブ
最新の記事
- 2024.4.29
- 赤色治療(Low-Level Red Light, LLRL)が近視進行を予防
- 2024.4.19
- 目に良い食べ物と栄養素
- 2024.4.13
- 高校生のインターネット利用時間が1日6時間超 近視予防対策が急務
- 2024.4.7
- 北大病院手術室のスタッフをお招きし、医療安全と感染対策の院内研修を行いました
- 2024.3.31
- 加齢黄斑変性のサプリメントは有効性と安全性が検証されています
- 2024.3.23
- ミノサイクリンは萎縮型加齢黄斑変性の治療薬になり得るか?
- 2024.3.15
- 白内障に関する患者様からのご質問
- 2024.3.8
- 眼科健診はどのタイミングで受けると良いのでしょうか?
- 2024.3.2
- 萎縮型加齢黄斑変性の治療薬剤:SyfovreとIzervay
- 2024.2.18
- 若年者の裂孔原性網膜剥離