滲出型加齢黄斑変性の治療に関するご質問
滲出型加齢黄斑変性は、黄斑部(網膜の中央部)に脈絡膜新生血管が発生する病気で、
脈絡膜新生血管からの出血や血液成分の滲み出しによる黄斑部網膜のむくみのために、視機能の低下が進行します。
脈絡膜新生血管の成長を活発化させるタンパク質の働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、新生血管の増殖や成長を抑制する治療法が世界中で行われています。
注射自体はあっという間に終わりますので、入院する必要はなく、外来で受けられます。
基本的なスケジュールは、まず1か月に1回のペースで連続3〜4回注射をします。その後は、病状により1か月~数か月ごとに効果を確認しながら注射を続けます。
注射の回数は、1年目に比べると2年目以降は少なくなる傾向にありますが、注射を受ける間隔は、患者ごとに異なります。
治療によって脈絡膜新生血管の成長を抑えることが期待できますが、完全に無くなることはありません。
また、病状が落ち着いた後、治療を中断すると、しばらくしてから再発したり、治療前の症状に戻ってしまうこともありますので、自己判断で受診を中断するのは避けましょう。
患者様やご家族から、度々いただくご質問と回答をご紹介します。
Q:日常生活で気をつけることは?
A: 禁煙・抗酸化作用があり、ルテインなどの黄斑色素を豊富に含む緑黄色野菜の摂取・加齢黄斑変性の予防に役立つとされる栄養素(亜鉛、ビタミンC・E、ルテイン)を含むサプリメントの服用が勧められます。加齢黄斑変性から目を守る日常生活の継続が大切です。
Q:加齢黄斑変性を放置するとどうなりますか?
A:放っておくと視力の低下が進み、眼鏡をかけても視力が0.1以下になる方もおられます。症状に気づいたらすぐに眼科を受診しましょう。
Q:加齢黄斑変性は治りますか?
A:現在のところ、どんな治療を行っても正常な見え方に戻る治療法はありません。治療の目標は、病気の進行を遅らせ、低下した視力を維持・回復させることです。上述の通り、放っておくと症状が進行していきますので、できるだけ良好な視機能を維持するためには、早期発見、早期治療が非常に大切です。
Q:目が悪くなったので、目を使わない方が良いのでしょうか?
A:目を使ったことで病状が悪化することはありません。病気によって視機能が低下したことで日常生活に制限を受けてしまう場面があるかもしれませんが、「いまできること」に目を向けて行動しましょう。
滲出型加齢黄斑変性の治療は、薬剤を眼内に注射する治療の登場により飛躍的に向上しました。一方、継続的に治療が必要なことや、正常な視機能に戻ることがないなどの課題が残っています。
治療の目標は、視力の改善だけではなく、生活の質を維持することにもあります。
加齢黄斑変性はその名の通り、加齢が誘因となり発症する病気です。
病気をどのように受け止めるかということは、加齢黄斑変性と付き合っていく上でとても大切な要素です。
生活の質を維持するために、加齢黄斑変性を前向きにとらえていただければと思います。
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