糖尿病網膜症に対する遺伝子治療
先日の米国眼科学会総会で報告された、糖尿病網膜症の進行抑制や病状改善を目的に開発された、遺伝子を利用した新薬の治験成績の中間報告をご紹介します。
この新薬は米国Regenxbio社が開発し、アッヴィ社と共同で第2・3相臨床治験が進められています。
(同薬剤の滲出型加齢黄斑変性に対する臨床治験も進行中です。)
現在、糖尿病黄斑浮腫や滲出型加齢黄斑変性の治療には、病気の発生や進行にかかわる物質の働きを抑える効果がある薬剤を、継続的に繰り返し眼内注射する必要があります。
開発中の薬剤は、現在使用されている薬剤を産生することが出来る遺伝子を眼球壁に1回注射することで、現在使用されている薬剤が継続的に眼内に放出されます。
その結果、治療回数の大幅削減による患者様の負担軽減が期待されています。
今回の米国眼科学会総会での報告は、第2相臨床治験の治療開始6ヶ月までの中間成績でした。
約半数の症例で、治療後6ヶ月で糖尿病網膜症の明らかな改善が得られ、かつ問題となるような副反応はなかったようです。
1回の注射でこれだけの治療効果が得られるのは、とても有望な薬剤かと思います。
ただ、現時点では対象となった症例数が少ないこと、まだ治療6ヶ月の成績であるため、
今後の長期成績の報告や症例数を増やした第3相臨床治験の経過報告が待たれます。
カテゴリー
- お知らせ (12)
- ブログ (437)
- iPS細胞 (19)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (35)
- サプリメント (14)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (17)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (106)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (2)
- 白内障 (21)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (50)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (3)
- 網膜剥離 (16)
- 網膜動脈閉塞 (8)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (12)
- 緑内障 (28)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (28)
- 近況報告 (83)
- 近視予防 (39)
- 飛蚊症・光視症 (15)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (10)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.11.16
- 「暗闇になじむまでが長い」はサイン? “暗順応”でわかる加齢黄斑変性の早期リスク
- 2025.11.8
- 内服薬で“黄斑”が傷む?最新研究が示した5つの要注意薬と上手なつきあい方
- 2025.11.1
- 網膜剥離は「防げる失明」:合図を知って、早く受診を
- 2025.10.26
- 「血糖だけ」じゃ足りない。低血糖も怖い: J-DOIT3が教える、網膜症予防の新常識
- 2025.10.17
- 点眼で加齢黄斑変性は治せる?最新研究が教えてくれる「期待」と「限界」
- 2025.10.11
- 散瞳検査と急性緑内障発作のリスク~瞳を広げる検査は安全なの?~
- 2025.10.3
- 飛蚊症や光が見えたら…「網膜剥離」になる前に知っておきたい目のサイン
- 2025.10.2
- 眼科疾患のリスク因子、診断・治療・予後の検討のための後ろ向き観察研究
- 2025.9.27
- 「進行は止められるのか?」─地図状萎縮の新治療と、患者たちの選択
- 2025.9.20
- 萎縮型加齢黄斑変性に治療薬「アイザベイ」



理事長・院長