白内障手術後ケアについて
日本では白内障手術が年間120万件ほど行われており、高齢者の増加により今後しばらくは更に手術件数が増加すると推測されています。
米国眼科学会ホームページの患者向けサイトに、白内障手術後ケアなどについての解説が掲載されましたので、内容を抜粋しご紹介致します。
白内障手術は小さな切開創から水晶体の濁りを除去し、人工水晶体(眼内レンズ)を移植します。
翌日には切開創の表面が被覆され閉鎖しますが、表面下の傷の完全修復には2〜3週程かかります。従って、術後は抗菌剤や消炎剤の点眼薬を使用していただきます。
白内障手術後の視機能回復に対する患者様の期待が高いので、「術翌日からどうして視力が1.0にならないのだろう」と心配される方がおられますが、
これは、人工股関節置換手術後に「術翌日から手術前と同じスピードでマラソンを走れないのはどうしてだろう」という質問と同じで、
小さな切開創の白内障手術であっても、視機能の回復にはある程度の期間を要します。
術後に初めて眼帯やアイパッチを外した時は、少しぼやけて見えるかもしれません。
なぜなら、人工水晶体に脳が適応するまでに多少なりとも時間を要するからです。
術後は少量の出血で白目が赤くなるかもしれませんが、数日で消失します。
痒みや異物感は術後によくある症状ですが、経過とともに徐々に良くなります。
ただ、術前からドライアイがあると異物感が持続しやすく、ドライアイの治療が必要です。
視力低下や強い目の痛み、視野欠損、悪心や嘔吐といった症状は、通常の術後経過とは異なりますので、すぐに眼科医にご相談ください。
白内障手術後の自動車運転については、両眼とも手術予定の患者様がまだ片眼しか手術が終わっていない期間は、両眼のバランスが悪いため運転に支障があるかもしれません。
特に強度近視の患者さんが両眼白内障手術を受けられる場合は、一般的に術後は近視の程度が軽くなるため、片眼しか手術が終わっていない期間は、両眼の近視の程度がアンバランスになるため、自動車運転は控えた方が良いでしょう。
術後の運動については、翌日からウォーキングの様な軽い運度が可能です。
ゴルフや自転車、ランニング、テニスの様な運度も1週間後にはOKです。
多くの患者さんが術後数時間で、読書やパソコン作業、テレビを見たりすることができます。
もちろん前述の通り、人工水晶体に脳が適応するまで少しぼやけて見えるかもしれません。
常用薬は術前後も継続可能です。
MRIやレントゲン検査なども制限なく受けていただけます。
術後に近視や乱視の大きさが安定するまで数週かかりますので、新しいメガネやコンタクトレンズの作成は安定してからが薦めです。
それまでの間、既製品の廉価なメガネの使用はOKです。
度数が多少合っていないメガネを使用しても、目にダメージを与えることはありません。
最後に、以下のようなコメントで締めくくっています。
「あなたの友達が白内障術後に見え方がとても良くなったと言っても、決して20歳の頃のような見え方に戻ると期待してはいけません」
一般的に、白内障手術は比較的短時間で終了し、目や全身への負担が少なく、術後の視機能の回復も早く良好です。
術後の生活の制限もさほどありません。
ただ、視機能の回復は年齢や目の状態などによって個人差があります。
術後の違和感についても個人差があるようですが、術後の経過に伴い改善します。
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