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2024.12.3 お知らせ
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昨年末、糖尿病眼学会は「糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)」を作成しました。
診療ガイドラインには、糖尿病網膜症が原因で生じる視機能障害を予防し、障害された視機能を可能なかぎり回復させることを目標に、糖尿病網膜症に関する、現時点で推奨される診療指針が示されています。
糖尿病網膜症は、糖尿病が原因で網膜の微細な血管が障害され、眼底に出血や浮腫が起こる疾患です。
糖尿病網膜症はかなり重症化しても自覚症状がほとんどないため、糖尿病患者様は自覚症状の有無にかかわらず、定期的な眼科検診が推奨されています。
糖尿病網膜症が進行し、視力が低下し視機能が障害される病状として、主に4つが挙げられます。
増殖糖尿病網膜症は重症化した糖尿病網膜症で、網膜表面のあちこちに破れて出血しやすい病的な血管(網膜新生血管)が生えた状態です。網膜新生血管が破れると、眼球の中に出血が流れ出します(硝子体出血)。出血量が少ないと飛蚊症(影が動いて見える)を自覚する程度ですが、出血量が多くなるに従い、著しく視力が低下します。
網膜新生血管は線維膜を伴って進展し、網膜新生血管同士がつながり、線維血管増殖膜を形成します。この膜が収縮すると、網膜が引っ張られ、網膜が眼球壁から剥がれる牽引性網膜剝離が起こります。牽引性網膜剝離は網膜の中心部である黄斑部に起こりやすく、黄斑部網膜が剥離すると、物が歪んで見えたり、視力低下をきたします。
網膜の微細血管障害が進行すると、微細血管が詰まり、網膜の血流が悪くなります。その結果、上述の網膜新生血管が発生するのですが、網膜血流の悪化がさらに進んだり、眼球全体の血流悪化が生じると、茶目(虹彩・隅角)にも新生血管ができます。この状態を放置すると、眼圧(眼球内の圧力)が極端に高くなり、眼痛や頭痛が著しく、失明に至る可能性が高い血管新生緑内障となります。
糖尿病黄斑浮腫は糖尿病網膜症の初期でも起こることがあり、物が歪んで見え、視力が低下します。糖尿病黄斑浮腫が持続すると、視力低下は進行し、視機能障害が残ります。
増殖糖尿病網膜症による硝子体出血や牽引性網膜剥離に対しては手術治療(硝子体手術)が適応となります。手術を行い、出血を除去し網膜剥離を治し、糖尿病網膜症を鎮静化させます。
血管新生緑内障に対しては、眼圧を下げる薬剤の点眼や内服、手術が行われますが、治療に抵抗する症例が少なくありません。
糖尿病黄斑浮腫に対しては、浮腫を改善させる薬剤(抗血管内皮増殖因子阻害剤)を目の中に注射する治療が実施されます。繰り返しの投与で視機能の維持向上を図ります。
視力が低下する4つの病状のうち、糖尿病黄斑浮腫以外は、糖尿病網膜症が重症化した増殖糖尿病網膜症で生じる病状です。網膜の広い範囲にレーザ−光線をあてる汎網膜光凝固術を行うことで、増殖糖尿病網膜症への進行を抑えることができます。
また、血糖や血圧を良好にコントロールすることで糖尿病網膜症の発症・進展の危険が低くなります。
糖尿病網膜症に対する治療の目的は、早期に診断し、適切な治療を適切な時期に行うことで、患者さんの見え方の質や生活の質を維持することです。