iPS細胞から網膜作成
山中伸弥先生が世界で初めてiPS細胞の作成に成功したのが2006年。
iPS細胞から網膜色素上皮細胞を作成し、これを加齢黄斑変性患者に移植した、世界初のiPS細胞を利用した再生医療に成功したのが2014年です。
この治療では、網膜を構成する色々な種類の細胞のうち、網膜色素上皮細胞のみをiPS細胞から作成、シート状に増殖させ、網膜下に移植しました。
今回、スイスの研究チームがiPS細胞から複雑な構造と機能を持つヒト網膜に極めて近似した網膜の作成に成功し、論文が学術雑誌Cellに掲載されました。
Cellは生命科学分野における世界最高峰の学術雑誌で、NatureやScienceとともに三大科学雑誌に数えられており、今回の研究成果が極めて価値の高いことがわかります。
研究チームが作成した網膜は、ヒト網膜と同様に細胞が幾重からなる層構造を示し、かつ網膜内に存在する細胞の種類やその細胞が持つ遺伝子情報もヒト網膜と近似していることが確認されました。
さらにそれらの細胞が情報伝達を行っており、光を感じた視細胞の情報が他の細胞に伝達されることも確認されました。
また、ヒトの網膜が成長に伴い成熟すると同様に、今回iPS細胞から作成された網膜はヒト網膜と同じスピードで成長・成熟することも明らかとなりました。
疾患の発症に関連する遺伝子の発現についても、ヒト網膜と今回作成された網膜は一致しており、iPS細胞から作成された網膜は疾患発症のメカニズム解明や治療法開発に有用であると考えられます。
今回の研究は、ヒト網膜の作成に成功したと言え、
網膜全体を用いた再生医療への大きな前進だと思います。
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