糖尿病黄斑浮腫の長期治療成績
糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の進行によって生じた毛細血管の瘤(こぶ)や血管から血液成分が漏れ、黄斑(網膜の中心部)がむくんだ状態です。
その結果、 物を見つめるとぼやけ、視力が低下したり、物がゆがんで見えるといった症状が現れます。
糖尿病黄斑浮腫は網膜症が重症なほど発症頻度が高まりますが、軽症の網膜症にも合併することがあるので、糖尿病の方は時折、片目を遮蔽して見え方のチェックをすることを習慣付けると良いでしょう。もちろん定期的な眼底検査は必須です。
糖尿病黄斑浮腫が持続すると、視機能の低下が進行しますので、早急な加療が必要です。
糖尿病黄斑浮腫の治療は、かつては網膜光凝固術やステロイド剤の眼組織への投与でしたが、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬はこれらの治療と比べ、視力改善効果が圧倒的に良好です。
2014年に本邦で抗VEGF薬が糖尿病黄斑浮腫の治療に保険適応となってからは、抗VEGF剤が治療の主軸となっています。
プロトコールTでは、治療開始1年目は毎月1回、2年目は1〜4か月毎、医療機関を受診し、必要に応じて抗VEGF薬を投与しました。その後の3年間は受診間隔の縛りはありません。
治療5年後の視力は、治療開始時と比べ視力表の1.5段くらい改善しましたが、2年目終了時と比べると視力表の1段ほど低下していました。
この結果を受けて論文では、長期に視力を維持するための通院間隔や薬剤投与の検討が必要であると考察しています。
今回の論文は、糖尿病黄斑浮腫に対する治療は長期的に適切な間隔での診察と抗VEGF薬投与が必要であることを裏付けています。
抗VEGF薬治療は、効果発現が速やかで、治療効果を実感しやすい治療法ですが、一方で通院や医療費負担など患者様の負担が大きい点が問題です。
治療の中断は視機能の低下を招き、日常生活で不便を感じる場面が増えてしまいます。
長期の治療で病状が落ち着き、抗VEGF薬投与の必要性が減少・不要となる疾患ですので、治療の継続が大切です。
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