深紅色光と視細胞のアンチエイジング
- 2020.8.28
- ブログ
1946年から刊行されている米国で最初の老化・老年学の科学雑誌Journal of Gerontology(老年学雑誌)に、
「40歳以上の方が深紅色光(波長670nm)を1日3分間見つめると、網膜で光を感じる視細胞の機能が改善する」という論文が掲載されました。
ヒトの細胞にはミトコンドリアという小器官が存在し、細胞活動に必要なエネルギー(アデノシン三リン酸、ATP)を産生する工場の役割をしています。
身体のあちこちに現れる老化の原因の一つは、加齢に伴いミトコンドリアのエネルギー産生が低下し、細胞の機能低下を招くことであると考えられています。
日々の生活において常に明暗を感じ取っている視細胞のエネルギー需要は高く、視細胞の老化は他の臓器細胞よりも早く現れると言われています。
視細胞内のミトコンドリアが産生するエネルギーは生涯を通じて70%程減少するため、視細胞の働きが悪くなり、老化に伴う視機能の低下を招きます。
深紅色光がミトコンドリアのエネルギー産生を増加させることが既に報告されており、
今回の論文の研究者は、加齢で機能が低下したミトコンドリアが深紅色光に暴露されることで、低下したエネルギー生産能が回復したことが、40歳以上の症例で視機能が改善した理由であろうと推測しています。
ところで670nmの深紅色光は作業用のLEDライトとして利用されていますし、眼科領域ではマイボーム腺梗塞・機能不全の治療に用いられています。
また、肌トラブルの改善や肌のハリ・透明感を回復させることを目的に美容領域でも利用されており、670nmの深紅色光を発生させる家庭用美容器機が販売されているようです。
米国眼学会のホームページには、今回の論文を受け、現時点では多人数を対象に深紅色光の有効性を検証した研究がなされておらず、視機能回復に関する深紅色光の有効性や副作用は不明であり、「目の老化防止を目的に、LEDライトや美容器機の深紅色光を見つめることはしないように」と注意喚起しています。
カテゴリー
- お知らせ (11)
- ブログ (469)
- iPS細胞 (19)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (9)
- アルツハイマー病 (8)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (36)
- サプリメント (15)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (17)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (15)
- 加齢黄斑変性 (115)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (2)
- 白内障 (27)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (55)
- 紫外線 (3)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (4)
- 網膜剥離 (17)
- 網膜動脈閉塞 (8)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (14)
- 緑内障 (35)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (29)
- 近況報告 (88)
- 近視予防 (43)
- 飛蚊症・光視症 (16)
- 黄斑円孔 (5)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (12)
アーカイブ
最新の記事
- 2026.7.13
- 「プロ」とは何かを考えさせられた勉強会
- 2026.7.12
- 「最近見えにくい」は老化のサイン? 〜アイフレイルをご存じですか〜
- 2026.7.5
- STVでもお話ししましたが…夏は「皮膚」だけでなく「目」も紫外線対策を
- 2026.6.28
- 全国の眼科医が集まる「日本眼科医会代議員会」に参加しました
- 2026.6.21
- 強い近視の方は緑内障に注意? ― 日本1400万人超の大規模研究からわかったこと
- 2026.6.14
- 「視力は良いのに見えにくい」― 網膜前膜で最初に低下するのは“読む力”かもしれません
- 2026.6.6
- 見えないところこそ大切に ― 手術室の空気環境を毎年確認しています
- 2026.5.31
- 白内障手術と同時に行う「iStent inject W」とは? ─ 最近の研究から見えてきたこと
- 2026.5.24
- 網膜の神経を守る“縁の下の力持ち” ― ミュラー細胞と新しい網膜保護の考え方
- 2026.5.16
- 「治療を休むと戻らない」―糖尿病黄斑浮腫で本当に怖いこと―



理事長・院長