クリスパー・キャス9を用いたレーベル先天黒内障に対する遺伝子治療
- 2019.8.21
- ブログ
アイルランドのアラガン社と米国エディタスメディシン社は、
小児期に失明に至るレーベル先天黒内障10型の患者に対し、
「クリスパー・キャス9」という最新の遺伝子編集技術を使った遺伝子治療の臨床試験を、米国で年内に始めることを発表しました。
クリスパー・キャス9という手法を用いた、ヒトの遺伝疾患の原因遺伝子を直接修復する世界初の臨床試験です。
2013年に報告されたクリスパー・キャス9という遺伝子編集技術は、従来の遺伝子編集技術と比べ、はるかに簡便・確実に目的の遺伝子を削除したり組み替えたりすることができ、現在、遺伝子編集が各分野で急速に広がるきっかけとなりました。
レーベル先天黒内障は幼児期に発症し重度の視力障害から青年期には失明に至る遺伝性疾患で、網膜細胞特有の遺伝子に変異があり、網膜の機能が正常に働かず、視機能障害が進行します。
今回の臨床試験では、レーベル先天黒内障10型の患者18人に対し、病因であるCEP290遺伝子変異を修復する薬剤を網膜下に注射する手術を行い、
想定外の遺伝子改変が起きないかなどの安全性と治療の有効性を評価するそうです。
ボストンにあるハーバード大学とマサチューセッツ感覚器病院などで臨床試験に参加する患者の受付が始まっているそうです。
クリスパー・キャス9技術よりも古い遺伝子編集の手法を用いたレーベル先天黒内障の遺伝子治療の有効性が報告されており、
2017年には米国食品医薬品局がRPE65遺伝子変異のレーベル先天黒内障に対する遺伝子治療を認可しています。
今回の臨床研究で、クリスパー・キャス9技術の安全性とゲノム編集の有効性が確認されると、従来と比べられないほどの速さで遺伝子治療が広がると期待されます。
カテゴリー
- お知らせ (12)
- ブログ (437)
- iPS細胞 (19)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (35)
- サプリメント (14)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (17)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (106)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (2)
- 白内障 (21)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (50)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (3)
- 網膜剥離 (16)
- 網膜動脈閉塞 (8)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (12)
- 緑内障 (28)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (28)
- 近況報告 (83)
- 近視予防 (39)
- 飛蚊症・光視症 (15)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (10)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.11.16
- 「暗闇になじむまでが長い」はサイン? “暗順応”でわかる加齢黄斑変性の早期リスク
- 2025.11.8
- 内服薬で“黄斑”が傷む?最新研究が示した5つの要注意薬と上手なつきあい方
- 2025.11.1
- 網膜剥離は「防げる失明」:合図を知って、早く受診を
- 2025.10.26
- 「血糖だけ」じゃ足りない。低血糖も怖い: J-DOIT3が教える、網膜症予防の新常識
- 2025.10.17
- 点眼で加齢黄斑変性は治せる?最新研究が教えてくれる「期待」と「限界」
- 2025.10.11
- 散瞳検査と急性緑内障発作のリスク~瞳を広げる検査は安全なの?~
- 2025.10.3
- 飛蚊症や光が見えたら…「網膜剥離」になる前に知っておきたい目のサイン
- 2025.10.2
- 眼科疾患のリスク因子、診断・治療・予後の検討のための後ろ向き観察研究
- 2025.9.27
- 「進行は止められるのか?」─地図状萎縮の新治療と、患者たちの選択
- 2025.9.20
- 萎縮型加齢黄斑変性に治療薬「アイザベイ」



理事長・院長