薬剤性角膜障害
両眼の視力が徐々に低下してきたと訴え、中年の男性が来院されました。
両眼の角膜表面が混濁し、目の表面がザラザラした感じで、目の表面が涙をはじき、目の潤いも悪くなっていました。
すでに半年以上、複数の眼科でドライアイの点眼治療を受けておられ、涙点プラグという涙の排泄を抑え、目の表面に留まる涙の量を増加させる治療も受けていましたが、次第に状態が悪化したようです。
また、内科の病気で入退院を繰り返し、薬物投与を受けておられ、複数の薬剤を内服されていました。
ドライアイは、角膜や結膜といった目の表面を潤している涙の安定性が低下し、潤いが損なわれる病気です。
目の表面が乾いて傷つきやすい状態となり、進行すると目の表面にたくさんの傷がつくようになります。
本来は透明な角膜の表面に沢山の傷ができると、角膜は混濁し視力が低下します。
今回の患者さんは、角膜混濁がひどく、ドライアイ治療が効いておらず、単なるドライアイではなさそうです。
点眼薬の使いすぎや、ある種の内服薬の副作用として、角膜に傷ができ、進行すると角膜が混濁することがあります。
薬剤による角膜障害です。
薬剤の使用後いつ頃から角膜障害が現れるかは、症例によりまちまちです。
早ければ数日後から生じますが、多くの症例は1か月以上経ってから症状が現れます。
角膜障害を誘発する薬剤は、角膜表面を覆っている細胞の増殖を抑制し、正常な角膜表面の構造を障害します。
また薬剤によっては、薬剤が角膜に沈着し、障害を誘発する場合があります。
点眼薬に含まれる防腐剤の多くは、角膜表面の細胞に悪影響を持っています。
もともとドライアイの患者さんは、涙の量が少なく、点眼薬の効果が強く現れる傾向にあり、点眼薬の副作用が現れるリスクが高まります。
また、複数の点眼薬を使用している場合や点眼回数が頻回な場合も副作用のリスクが高まります。
薬剤による角膜障害が疑われた場合は、可能な限りその薬剤を中止することが治療となります。
他科から処方されている内服薬については、診療科間の連携が重要です。
角膜障害の程度と服薬継続の必要度や代替薬の有無などを考慮し、治療が行われます。
今回の患者さんが内科治療を受けている病院には眼科も併設されており、診療科間のスムーズな連携を期待し、同院の眼科に加療を依頼しました。
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