角膜上皮幹細胞疲弊症に対するiPS細胞治療
- 3月5日、角膜上皮幹細胞疲弊症によって本来は透明な角膜が白く濁った患者に、
- iPS細胞から作った角膜細胞を移植する臨床研究の実施が、厚生労働省に承認されました。
- 角膜と結膜の境目に、角膜表面を覆う角膜上皮細胞を作る角膜上皮幹細胞が存在します。
- 眼表面の強い炎症性疾患や薬剤アレルギーなどにより、角膜上皮幹細胞が消失あるいは著しく減少した状態が、角膜上皮幹細胞疲弊症です。
- 角膜上皮幹細胞の働きが著しく低下すると、角膜上皮細胞が作られず、
- 角膜の周りにある結膜上皮細胞が角膜に入り込み、角膜表面を覆い、
- 本来は透明な角膜表面が白濁してしまいます。
- その結果、目の中に光が届きにくくなり、視力が低下します。
- 現在は濁った角膜を除去し、新たな角膜を移植する全層角膜移植が行われています。
- 提供される角膜の不足や、拒絶反応が起きやすいなどの問題があります。
- 今回の臨床研究では、京都大学が作製・備蓄しているiPS細胞から、
- 治療を受ける患者にとって拒絶反応が起きにくいタイプのiPS細胞を選択し、
- 大阪大学が角膜上皮細胞を作製します。
- 角膜上皮細胞を増やし、角膜上皮細胞のシートを作り、
- 手術で患者の濁った角膜上皮を除去し、角膜上皮シートで覆います。
- この治療により、角膜の透明性を回復させ、視機能の改善を得ることが期待されます。
- 臨床研究では、角膜上皮幹細胞疲弊症の患者4人を対象に、治療効果と安全性を検証します。
- iPS細胞を使った治療法の利点として、提供角膜を確保する必要がなくなり、
- 従来の角膜移植よりも拒絶反応が起きにくく、長期の治療効果が期待できます。
- 本邦でのiPS細胞を用いた治療の承認は、眼科領域では滲出型加齢黄斑変性に続き二疾患目となります。
- 先日は、脊髄損傷に対するiPS細胞を用いた治療が承認されました。
- パーキンソン病や心不全の治療、血小板の輸血剤など、iPS細胞の治療への利用が広がっています。
- 今回の臨床研究の治療効果と安全性の検証には長期間の観察が必要です。
- 朗報を期待して待ちましょう。
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