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視界砂嵐症候群(Visual snow syndrome、雪視症)

  • 2ヶ月ほど前に30歳代の女性が来院されました。
 
  • 「数日前から視野全体に砂を撒き散らしたように見え、かすんで見えにくい。」との訴えです。
  • 「砂嵐の中で物を見ているような、あるいは壊れたテレビ画面のような見え方で、日常生活ができない」と、大変困っておられました。
   
  • 当院受診の前日、他の眼科を受診されたそうで、目の中に異常はなく、飛蚊症なので様子をみるようにと説明されたそうです。
 
  • この症状は、視界砂嵐症候群とかVisual snowあるいはVisual snow syndromeと呼ばれています。
  • 「吹雪の中で目を開けているようだ」と症状を表現される患者さんもおられるからです。
   
  • 上記の症状に加え、飛蚊症のような浮遊物がたくさん見えたり、光が放射状に広がって眩しいなど、視界砂嵐症候群の患者さんの訴えは多彩です。
   
  • 眼科検査では異常は見つかりません。この疾患は珍しく、眼科医の認知度は低いので、眼科を幾つか受診しても「問題ありません」と片付けられる傾向にあります。
  • 患者さんは、突然の症状出現により日常生活に大きな支障をきたしますが、症状が病気によるものであると診断されないため、患者さんの不安や心身の疲労がかさみ、精神的にも疲弊しやすくなります。
   
  • 視界砂嵐症候群の原因は完全には突き止められていませんが、最近の研究によって、大脳や小脳の限局した部位に代謝亢進領域が認められることが分かってきました。
  • 今後、この代謝の変化を改善させる治療薬等の開発により、標準的な治療法が確立されていくものと思われます。
 
  • 現時点では神経作用を鎮める効果の薬や偏頭痛の治療薬などの内服が推奨されています。
  • 時間をかけ徐々に症状が改善していくようです。
   
  • ただ、患者さんに診断名を伝え、「病気によって症状が起こっていること」を説明することで、患者さんは逆に安心され、病気や症状と向き合うことができますので、視界砂嵐症候群については、まず診断をつけることが治療の第一歩になります。
   
  • 今回の患者さんは、他の疾患との鑑別や治療についてコンサルトするために、本疾患に造詣の深い、医療法人社団済安堂 井上眼科病院 名誉院長 若倉雅登先生に診察を依頼し、内服薬治療が始まりました。

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