飛蚊症〜目の前に虫のような影が動いて見えるようになったら
- 眼前に虫のような影が動いて見えるような症状が
- 飛蚊症(ひぶんしょう)です。
- 眼球の約2/3は硝子体(しょうしたい)という
- 生卵の白身のような透明でドロッとした物質が詰まっています。
- 硝子体は光が網膜に届くための光の通路です。
- 光の通路である硝子体に濁りが生じ、網膜に影を落とします。
- この濁りが眼球の動きに合わせて硝子体中を浮遊するため、
- 網膜上の影も動き、あたかも目の前に蚊が飛んでいるように感じます。
- 硝子体の濁りの大きさや形、影の濃さは
- 濁りの原因疾患によって異なります。
- 急に生じた? その後、悪化しているか?
- 片眼性か両眼性か?
- 以前の眼の病気は? なども、
- 原因疾患を知る上で重要な情報となります。
- 飛蚊症の原因として最も多いのは、硝子体の加齢性変化です。
- 加齢性変化により硝子体に線維状の混濁物が浮遊するようになり、
- 飛蚊症が出現することがあります(生理的飛蚊症)。
- 硝子体の加齢性変化がさらに進行すると
- 網膜と接着していた硝子体が網膜から剥離する、
- 後部硝子体剥離が生じます。
- この際、視神経乳頭から分離した線維組織が硝子体に漂うようになり、
- ある日突然、黒い影が出現するようになります。
- 硝子体と網膜の癒着が強い部位があると、
- 後部硝子体剥離の進行過程でその部位の網膜が裂け、
- 網膜裂孔が生じることがあります。
- その際、網膜血管が切れ、出血し、
- 出血が硝子体を浮遊し(硝子体出血)、飛蚊症が生じます。
- 出血量が多いと硝子体全体が濁り、視力が低下します。
- 少量の場合は、「墨を流したような大きな影」あるいは
- 「雲のような影が見える」と言った症状になります。
- 網膜裂孔は裂孔原性網膜剥離(いわゆる網膜剥離)に進展する危険性がありますので、早急に眼底検査を行う必要があります。
- 網膜裂孔以外にも硝子体出血の原因となる疾患として
- 増殖糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症・網膜細動脈瘤・加齢黄斑変性
- などが挙げられます。
- 眼の中にぶどう膜炎などの炎症性疾患が生じると
- 炎症細胞や血管からの血液成分が硝子体に現れ、
- 飛蚊症の原因となることがあります。
- 生理的飛蚊症や合併症の無い後部硝子体剥離による飛蚊症は、
- 標準的な治療指針では治療の対象とはならず、放置可能です。
- ただし後部硝子体剥離は網膜裂孔・網膜剥離が生じるリスクがありますので、
- 突然の飛蚊症出現時には早急な眼底検査、注意深い経過観察が必要です。
- もちろん他の疾患による飛蚊症の場合は、疾患に合わせた治療を行うことになります。
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