アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」と加齢黄斑変性
日本の製薬会社エーザイと米国のバイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が米国食品医薬品局(FDA)に承認されました。
アルツハイマー病患者の脳には、症状が現れる20~30年前から“アミロイドベータ”という異常タンパクが溜まり始めることが知られています。
レカネマブは、脳に蓄積するアミロイドベータを除去する薬剤で、臨床治験では早期のアルツハイマー病患者で病気の進行を27%遅らせる効果が確認されました。
2018年のブログでご紹介しましたが、アミロイドベータは加齢に伴い網膜にも溜まります。
視野の真ん中が見え難くなったり、物がゆがんで見えることで視力低下が進行する加齢黄斑変性では、網膜の中央付近(黄斑部)にドルーゼンと呼ばれる黄白色の物質が沈着します。
このドルーゼンの構成成分がアミロイドベータです。
さらに、アルツハイマー病患者さんは、加齢黄斑変性の発症リスクが高いことが知られており、アルツハイマー病と加齢黄斑変性の発症には、何らかの関連性があるのではと考えられれいます。
脳に蓄積するアミロイドベータを除去するレカネマブは、網膜に蓄積するアミロイドベータも除去できるのではと期待されます。
国際アルツハイマー病協会によると、米国のアルツハイマー病患者の数は600万人以上で、エーザイはレカネマブの発売後3年間で米国のアルツハイマー病患者約10万人がこの薬剤を使用すると推計しています。
10万人のアルツハイマー病患者の中には加齢黄斑変性を患っている患者が含まれていることが予想されます。
これらの患者さんの副次効果として、眼科検査でドルーゼンが減ったとか改善したという結果が報告されることを期待しています。
そうなると、アミロイドべータをターゲットとした加齢黄斑変性治療薬の開発が活発となり、加齢黄斑変性に対する初期治療薬が誕生するかもしれません。
エーザイは日本やEUなどでもレカネマブのアルツハイマー病治療薬として承認を申請中です。
アルツハイマー病も加齢黄斑変性も高齢者の日常生活に様々な支障をもたらし、生活の質を低下させる疾患です。
日本での承認が待たれます。
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