加齢黄斑変性とシャルル・ボネ(チャールズ・ボネット)症候群
加齢黄斑変性は、加齢の影響で黄斑と呼ばれる網膜中央部の働きが進行性に低下する病気で、物が歪んで見えたり、視野の中央部分が見えなくなることで、視機能が悪化します。
昨年のOphthalmologyに、加齢黄斑変性の患者さんの12%以上が、実際には存在しないものが見える「シャルル・ボネ症候群」を体験していると報告されおり、実際にはその割合はもっと高いのではと推測されています。
シャルル・ボネ症候群は、視機能が低下している以外は健康な方(認知症や薬物中毒、その他の障害がない方)が、実際には存在しないものが見えるという症状です。
この幻覚のような症状は、人や小動物、明るい光や色が見えることが多いそうで、持続時間は短く、通常、目を閉じたり、視線をそらすことで自然に消えるようです。ただ中には数時間続くこともあるようです。
症状を引き起こす明らかな原因は明らかにはなっていませんが、ストレスや過度のあるいは不十分な照明といった環境要因は症状発現の誘因となるようです。
目の病気のために視機能が低下し、脳に到達する視覚情報が減ってしまうことで、視覚情報に対する脳の反応が過敏となり、幻覚のような症状が現れると考えられています。
シャルル・ボネ症候群を体験する方は、この幻覚のように見えているものは現実には存在しない非現実であると自覚されていることが多いようです。
ただ、認知症や精神的な疾患なのではと危惧され、逆に症状についてご家族などに話さないようです。
シャルル・ボネ症候群を経験することで、認知症や精神的な疾患を発症しているのではとご懸念され、悩まれる方が少なくないようです。
私達眼科医は、この症状が視機能の低下に由来する可能性があることについて説明することで、症状を有する方のお悩みを和らげるよう努めなければなりませんし、周りの方もシャルル・ボネ症候群を記憶の片隅に留めておいていただければと思います。
もう一つ、我々眼科医にとって大切なことは、視機能障害の原疾患を治療し、視機能をできるだけ高めることです。
この症候群の患者さんの中には、視機能障害のために手術または治療を受け、視機能が向上することで、幻覚のような症状が治る方が報告されています。
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