アカントアメーバ角膜炎
- 2019.7.24
- ブログ
世界で最も権威のある医学誌「New England Journal of medicine」の7月19日号に、アカントアメーバ角膜炎の症例報告が衝撃的な写真とともに掲載されました。
患者は英国在住の41歳女性で、2カ月間、左目の痛みやまぶしさ、見えづらさを感じ、眼科専門病院を受診しました。
右眼は正常でしたが、左眼視力は0.1(眼鏡矯正不能)に低下しており、白目(結膜)や瞼の裏は真っ赤に腫れ、瞼を開けているのがやっとの状態でした。
写真は損傷を受けた黒目(角膜)が染色液で蛍光色に染まっています。角膜の半分以上が広く損傷を受けています。
病変部からアカントアメーバという海や湖、水道水、土壌や公園の砂などに広く存在している微生物が検出され、アカントアメーバによる角膜感染症と診断されました。
アカントアメーバ治療の特効薬はなく、少しでも効果のある抗真菌薬や消毒薬を点眼し、角膜の表面を削るなどの治療法を併用しますが、極めて治りにくいのが特徴です。(日本眼科学会ホームページ参照)
今回の患者さんは、アカントアメーバの感染症は治まったものの、角膜が白濁してしまい、角膜移植を受け、視力がわずかに改善するに止まったそうです。
ではなぜ、この患者さんの角膜がアカントアメーバに感染してしまったのでしょうか?
患者さんは使い捨てコンタクトレンズを使用していて、シャワーを浴びる時もプールで泳ぐ時もつけっぱなし。そのため水中に生息するアカントアメーバに角膜が感染してしまいました。
誤ったコンタクトレンズの使用が重大な視機能障害をもたらしました。
下記はアキュビューコンタクトのホームページの一節です。
「プールなどの水回りには雑菌が多く生息しています。雑菌は水と一緒に目に入ってきますが、コンタクトレンズを装用した状態と裸眼とでは目の状態が異なります。
私たちはまばたきを繰り返すことで、目の雑菌を洗い流しています。また涙には抗菌作用のある成分が含まれており、目の感染を防ぐ働きがあります。しかし、コンタクトレンズを装用していると、涙の洗浄作用が弱くなり、細菌の繁殖をゆるしてしまう可能性があるのです。コンタクトレンズを装用したまま、海やプールに入ると、目の健康を損なう可能性があります。コンタクトレンズをはずしてしまうと良く見えないという方は度入りのゴーグルを使用することをおすすめします。」
カテゴリー
- お知らせ (10)
- ブログ (424)
- iPS細胞 (19)
- IT眼症 (9)
- OCTアンギオ (8)
- アルツハイマー病 (7)
- アレルギー性結膜炎 (5)
- お困りごと解決情報 (17)
- こんな症状が出たら (35)
- サプリメント (13)
- スタッフから (5)
- ドライアイ (17)
- 中心性漿液性網脈絡膜症 (2)
- 人工知能(AI) (14)
- 加齢黄斑変性 (101)
- 外斜視 (1)
- 抗がん剤による眼障害 (1)
- 白内障 (20)
- 看護からのお知らせ (1)
- 眼精疲労 (12)
- 糖尿病網膜症 (48)
- 紫外線 (2)
- 紫外線、ブルーライト (6)
- 網膜前膜 (3)
- 網膜剥離 (14)
- 網膜動脈閉塞 (8)
- 網膜色素変性症 (7)
- 網膜静脈閉塞 (11)
- 緑内障 (27)
- 色覚多様性 (2)
- 講演会 (28)
- 近況報告 (83)
- 近視予防 (39)
- 飛蚊症・光視症 (14)
- 黄斑円孔 (4)
- 黄斑前膜 (3)
- 未分類 (9)
アーカイブ
最新の記事
- 2025.8.17
- 新登場目前 “症状そのもの”に効くドライアイ薬と、“水はけ”を良くする緑内障薬
- 2025.8.10
- 「見える」をもう一度:HOPE Meeting vol.4で感じた視機能再建の現在地
- 2025.8.1
- 「見る」を取り戻す未来へ:イーロン・マスク氏と視覚再生技術の最前線
- 2025.7.28
- 令和7年お盆休みのお知らせ
- 2025.7.27
- サンデグラジェノックス販売終了のお知らせ
- 2025.7.27
- 白内障と骨折リスクの意外な関係:手術がもたらす“転ばぬ先の杖”
- 2025.7.20
- 9か月に1回で視力を守る時代へ 糖尿病網膜症に登場した“埋め込み式”治療を解説
- 2025.7.13
- 見えにくさの原因に「老化細胞」?―注目の新薬「セノリティック」とは
- 2025.7.9
- 糖尿病で目が見えなくなる時代は変わった?―糖尿病網膜症の20年間の変化を解析
- 2025.6.30
- “目が見えなくなる美容医療”がある – AAOが明らかにしたヒアルロン酸注射の失明リスク