糖尿病網膜症の新しい治療法「ポートデリバリーシステム(PDS)」とは?
~注射の回数を減らしながら、視力を守る新技術~
糖尿病は全身の血管に悪影響を及ぼしますが、特に目の奥にある網膜の毛細血管が傷つくと「糖尿病網膜症」という病気を引き起こします。これが進行すると、視力が低下し、時には失明に至ることもあります。その中でも「糖尿病黄斑浮腫(DME)」は、網膜の中心がむくんで見えにくくなる状態で、治療が必要です。
これまで、DMEや糖尿病網膜症の進行を防ぐためには、「抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬」という薬を目に直接注射する方法が使われてきました。この薬は、網膜の中で悪さをするVEGFというタンパク質の働きを抑え、血管の漏れや異常な新しい血管の発生を防ぎます。ただし、この薬は効果が長続きしないため、月に1回程度、何年も注射を続ける必要があり、患者さんにとって大きな負担です。
PDSの有効性を調べた2つの大規模な研究があります。
もちろん、この装置は手術で入れるため、術後に一時的に視力が落ちたり、結膜にトラブルが起きたりするリスクもあります。また、以前には装置の一部がうまく機能しなくなる不具合が報告され、改良のうえ、米国食品医薬品局(FDA)に再認可されたという経緯もあります。しかし今では、品質が強化され、安全性も改善されています。
このようにPDSは、長期的な視力維持と治療負担の軽減を同時にかなえる、希望の持てる新技術です。毎月の注射通院が難しい方にとって、大きな助けとなるでしょう。今後は、新生血管型加齢黄斑変性など、他の病気にも応用が広がり、さらなる医療の進歩が期待されます。
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